TSMC「ピークはまだ」敵失でAI半導体ブーム独走 ASMLショックが映すインテルとサムスンの"今"

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ASMLは、最先端の半導体製造に欠かせない「EUV露光装置」を世界でただ一社、製造できる企業だ。EUV露光装置が同社の売上高に占める割合は3〜4割程度ではあるが、その受注状況は半導体メーカーの最先端品投資へのバロメーターとも言え、注目が高い。

見通しを引き下げた要因についてASMLは、「AI以外の分野の回復が後れていること」や「一部の顧客で最先端品の立ち上げが遅れ、一定の需要が実現しないことが明らかになった」などと説明。名指しこそしなかったものの、「一部顧客」がインテルとサムスンであるのは明らかだ。

とくにインテルの苦境は鮮明だ。同社はファウンドリー事業の立ち上げに苦戦しており、今年に入り投資計画や人員の大幅削減を発表。その一貫として、ドイツとポーランドで建設を進めていた2工場の稼働を2年間延期することを発表した。

サムスンも、ファウンドリー事業でのシェア低下に苦しんでいる。台湾の調査会社トレンドフォースによれば、2021年末に18%あったファウンドリー業界内でのサムスンのシェアは足元で11%までじりじりと低下。最先端品の歩留まりに課題があるとされ、TSMCにシェアを奪われ続けている。現在はとくに、劣勢に回り始めたメモリー事業に投資を傾けている状況だ。

強まる独走体制

ASMLのEUV露光装置は1台200億~400億円程度と高額で、最先端装置は500億円近いとされる。年に数十台の出荷で納期も比較的長いため、大口顧客の投資削減のインパクトをもろに受ける。

一方で、ほかの国内装置メーカーの中からは「インテルやサムスンが投資を削減したとしても、最先端半導体へのニーズは変わらない。装置の出荷をTSMCに振り向けるだけ」(国内装置メーカーのIR担当者)との声もある。TSMCは顧客のAI需要を1社で吸い込んでいるにとどまらず、サプライヤーへの求心力もさらに高めている構図だ。

TSMCが製造する現在の最先端品は、3ナノ世代の半導体。最大顧客のアップルが2023年9月に発売したiPhone 15シリーズから搭載が始まっており、わずか1年で売上高の20%を占めるまでになっている。2025年後半には、次の世代に当たる2ナノ品の量産が始まる予定だ。「3ナノと比較して、これまでの想定以上の需要がある。3ナノよりも多くキャパシティを用意する予定」(ウェイCEO)。

こうした見通しを受けて、会見時には独占禁止法に抵触するリスクについて問われる場面もあったほどだ。AI需要がバブルで終わる可能性は拭いきれないが、その過程でTSMCの独走態勢制がより強固になっているようだ。

石阪 友貴 東洋経済 記者

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いしざか ともき / Tomoki Ishizaka

早稲田大学政治経済学部卒。2017年に東洋経済新報社入社。食品・飲料業界を担当しジャパニーズウイスキー、加熱式たばこなどを取材。2019年から製薬業界をカバーし「コロナ医療」「製薬大リストラ」「医療テックベンチャー」などの特集を担当。現在は半導体業界を取材中。バイクとボートレース 、深夜ラジオが好き。

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