セブンの「上げ底弁当?」が今また"猛烈批判"の訳 値上げによる客離れを恐れ、ファン離れが発生か

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とはいえ、全体的な物価高や、他のコンビニやスーパーでも同様の事例はあり、これまではそれらの事例がネット上で激しく叩かれることはなかった印象だ。しかし、今回の減益報道をきっかけとして、たまりにたまった鬱憤が一気に噴出した感じがある。

こうした背景には、最近のセブン&アイHDを見ていて「大丈夫か?」と思うような事案が重なったこともあるだろう。カナダのコンビニ大手クシュタールから買収提案を受けたり、イトーヨーカドーの分離をめぐるゴタゴタがあったり、それに伴って社名の変更を発表したり……と、ニュースには事欠かないが、「叩きやすい」不安定な状態になってしまったことは間違いない。

値上げを恐れすぎた結果、ブランドの信頼も失ってしまった?

今回の事例から「ただ、一部の人がセブン減益の理由を誤解しているだけ」と思うことはたやすい。

しかし、筆者としては今回の騒動は、多くのビジネスパーソンにとって「教訓になる」事例だと考える。というのも、今回の袋叩き状態は「セブンが値上げを恐れすぎた結果、ブランドの信頼も失ってしまった結果ではないか?」と推測できるからだ。

ファンマーケティングの名著に『グレイトフル・デッドにマーケティングを学ぶ』(日経BP/2011年)がある。アメリカの伝説的なバンド「グレイトフル・デッド」の活動の広げ方を、マーケティングの観点から説明したものだが、その中に「最前列の席はファンにあげよう」という章がある。そこにはこう書いてある。

グレイトフル・デッドは、顧客や消費者に対し、配慮と敬意を持って接することを教えてくれる。だが、多くの企業は、新しいお客さんを獲得しようとする一方で、昔からの忠実なお客さんを最優先するのではなく、無視している。ビジネスを成長させるのは大賛成だが、既存の顧客や消費者の気持ちを犠牲にしてはならない。

円安が長引く、なんでもかんでも値上げ値上げの昨今。多くの企業が値上げを実施しているが、その一方で、上げ幅を下げるためにステルス値上げに踏み切っている会社も少なくない。

しかし、単純な値上げよりも巧妙な方法であるステルス値上げは、顧客にとっては不誠実な行為と見えてしまい、場合によっては純粋に値上げをするよりも悪影響を及ぼす場合もあるのだ。引用の言葉を借りれば「既存の顧客や消費者の気持ちを犠牲に」する行為だからだ。

話を戻すと、セブンは最近、スムージーや宅配ピザ、ドーナツなど新商品をどんどん投入している。これ自体、コンビニが生き残るために必要で、素晴らしいことだ。

しかし一方、これまで売られていたおにぎりやお弁当においては、やや言い方はキツくなるが「ファンをだますような手段を取っている」と受け止められても仕方がないのではないか。

もちろん、そのような意図は会社側にはないだろう(し、ないと信じたい)。しかし今回、ここまでセブンに対する厳しい意見が見られたことを踏まえると、「そのように消費者に感じさせていること」そのものを認識しなければならないだろう。

ドーナツにせよスムージーにせよ、新しい顧客の獲得手段なのだろうが、それらに注力するあまり、旧来の忠実なお客さんを無視している(ように見えてしまっている)のが今のセブンなのだ。

セブン・イレブン ドーナツ
肝煎りで始まった(再挑戦した)ドーナツ。こういった新しい試み自体は非常にいいものだが、一方で昔からいるファンを大切にできているかも、商売では問われる(筆者撮影)
次ページとは言え、ファンを大切にするのは、商売の基本だ
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