嫌われ養鶏所→人気観光地に「たまご街道」の軌跡 地域住民と共生するためにやってきたこと

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まず取り組んだのはできるだけ周囲に迷惑をかけない環境作り。

「臭い、虫、音その他をできるだけ減らす努力を続けてきました。例えば鶏に与える餌は消化吸収のいい発酵飼料に変えることで排泄物が臭わなくなります。飼料を変えるなどに加え、養鶏場への理解を深めていただく努力を続けるなどしてきた結果、ここ何年かはクレームを受けなくなりました」というのは、「スイートエッグ」を運営する小川フェニックスの久木田幸城さんだ。

同社では地域との接点を作り、理解してもらおうといろいろな形で卵を食べてもらう努力を続けてきた。20年前に卵直売所をスタートし、取れたて野菜を置くようになり、続いてプリンを作って販売。今ではカフェも週末ランチ時は入れないほどの人気になっている。

「近くの小学生を職業体験で受け入れてもおり、子どもたちの考えたメニュー6種類を店で出したことも。そうした子どもたちがバイトに応募してくれる日を妄想しています」

卵を購入した客に年間300通の手紙

同じような努力は昔の味たまご農場でも続けられている。前述のハンバーガー屋では学生向けに通常料金の半額の出世払い価格が設定されている。この地で長く事業を続けられてきたことの恩返しをしたいという思いからで、赤字でも続けているが、根底には養鶏を知ってもらいたいという思いもあることだろう。

また、田中さんは卵を買ってもらったお客さんに向けて年間300通もの手紙を書き、直売店の店頭には手作りの新聞が置かれている。これは養鶏業に理解を求めると同時に、昔の味たまごのファンを育てるためのもの。このエリアの養鶏場はそれぞれに飼料に工夫を凝らすなど品質向上に努めており、その中で選ばれるためには養鶏場のキャラを作っていく必要があると思っているそうだ。

各養鶏場がそれぞれ個別に模索を重ねているわけだが、残念ながら限界もある。確かに以前に比べれば臭いは少なくなり、ハエも発生しにくくはなったが、いくら努力してもゼロにはできない。生き物を飼育している以上、無臭、無音などはありえず、まだまだ暴言にさらされている事業者もある。養鶏場移転を信じた人たちのうちには、いまだに移転を願っている人も少なくない。

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