ハリスもトランプも「米国に好ましくない選択」だ ジョン・ボルトン元大統領補佐官に聞く【後編】
――アメリカの外国人記者協会(FPA)が8月22日に主催した記者会見で、あなたは次のように話しています。「民主党は(8月の全国党大会で)、ハリス副大統領を現政権の一員としてではなく、『現状維持』の象徴であるトランプ氏に対峙して『変化』をもたらすことができる人物として、うまく位置づけた」と。
バイデン氏が今も民主党の大統領候補であったなら、民主党は窮地に陥り、トランプ氏がほぼ確実に勝利を収めることになっただろう。だが、ハリス氏の登板で選挙戦は大接戦の様相を呈している。勝者を予測できないのはそのためだ。
――あなたは一貫して、「トランプ氏は大統領職にふさわしくない。第2次トランプ政権はアメリカ、そして世界にとって危険だ」と訴え続けてきました。共和党員であるあなたにとっても、トランプ氏の復権よりハリス氏が勝って民主党政権が続くほうがいいのでしょうか。
トランプ氏が大統領になっても、ハリス氏が大統領になっても、国際的観点から言えば、アメリカにとって好ましいとは言えない。私に言わせれば、いずれも魅力のない選択肢だ。アメリカの同盟国から見てもそうだ。
トランプ氏は、北大西洋条約機構(NATO)であれ、日米同盟であれ、安全保障条約の重要性を理解していない。そうした取り決めが、当事者である同盟国すべてにとって価値があるということがわかっていないのだ。トランプ氏が復活するようなことがあれば、彼が同盟国に悪影響を及ぼすのではないかと、大いに憂いている。
ひるがえってハリス氏も、こと外交となると、副大統領としての3年半余りの間に学んだことくらいで、その経験は非常に限られたものだ。ハリス政権が誕生したら、少なくとも1年以上はバイデン政権の方針を大いに踏襲しそうだ。しかし、それでは、中国や北朝鮮、イランなどの脅威に満ちた世界にとっては不十分だ。
トランプもハリスも大統領にふさわしくない
――あなたがトランプ氏にもハリス氏にも1票を投じるつもりがないことは承知しています。一方、反トランプ派の代表と言ってもいいリズ・チェイニー元下院議員(共和党)も、彼女の父親であるディック・チェイニー元副大統領(注:ブッシュ<子>政権)も、ハリス氏への投票を公言しています。「国家」の安定を最優先し、ハリス氏に投票する一部の共和党関係者のように、なぜあなたはハリス氏に1票を投じないのですか。
トランプ氏もハリス氏も大統領にふさわしくないからだ。私にとって、それは「選択」であり、今回の大統領選では選択肢が存在しないのだ。甲乙つけがたい。私に言わせれば、いずれも不十分だ。
ディック・チェイニー氏がハリス氏への投票を明言したのには驚いた。私は、(無効票になっても)またチェイニー氏に投票するかもしれない。まだ決めていないがね。今でも彼を尊敬している。保守的な共和党員に投票したいのだ。それが誰であろうと、私が最終的に1票を投じるのは、そうした人物だ。
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