一時期はバイブス(高揚感)で支持を伸ばしたハリス氏だが、経済情勢に対する人々の悲観はトランプ氏の追い風となった。
11月5日大統領選の日、アメリカ東部時間の深夜には、すでに伝統的に民主党の牙城である「ブルーウォール(青い壁)」は崩壊の兆しが現れ始めていた。
翌6日未明、カマラ・ハリス副大統領は激戦のラストベルト地域最重要州のペンシルベニアで敗北。激戦州の選挙人最大の同州には、選挙終盤戦でハリス選対本部からも応援のスタッフを派遣し、巨額の広告費も投入していた。だが、その州を落とし、ハリス氏落選が確実となった。
ハリス氏が直面した政治環境はあまりにも厳しかった。現職バイデン大統領の支持率は41%と過去30年の大統領選では最低値。さらにはウクライナとガザなど世界情勢も不安定なことも現職副大統領には強い逆風となった。
アメリカ国民の約7割が「国は間違った方向に進んでいる」と捉えている中、大統領選を迎えた(2024年10月11~14日、AP・NORC調査)。
選挙最大の争点は「経済」
トランプ氏は、自身の大統領時代に記録した40%台後半の支持率と同水準あるいはそれを上回る数値で大統領選を迎えた。
選挙戦で特に重視したのがインフレをはじめとする経済問題と移民問題といった国民が最も懸念することだ。いずれも「トランプ氏のほうの対策をハリス氏よりも信じる」と回答する国民が多い。
特にトランプ陣営は「第1次トランプ政権時代のアメリカはよかった」との郷愁感を誘う戦略を展開し、それが功を奏したようだ。
「皆さんの暮らしは4年前と比べ、よくなりましたか」――選挙戦の終盤戦、トランプ氏は支持者集会ごとに繰り返し尋ねた。これは1980年大統領選でカーター元大統領を破ったレーガン元大統領も訴え、効果を発揮した言葉だ。
2024年大統領選におけるCNN出口調査によると、約67%の国民が「アメリカ経済はよくない」と回答。バイデン氏がトランプ氏を破った2020年大統領選では、約50%の国民が「アメリカ経済はよくない」と回答していた。
この結果からも、今回の選挙では経済情勢に対する国民の悲観的な見方がハリス氏の足を大幅に引っ張ったもようだ。
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