中嶋聡監督の「電撃退任」で組織に起きうる大変化 令和の名監督の凄さと限界、最後に与えた教え
まず、選手に寄り添う「優しいリーダー」について。ビジネス界でもトレンドと化している感があるが、どういう長所があり、また短所があるのか。
組織づくりや人材マネジメントに詳しい、経営コンサルタントの横山信弘氏は、「あくまで一般論として」と前置きしつつ、優しいリーダーのメリットとデメリットについて次のように話す。
「メンバーに寄り添うリーダーは、組織の緊張感を和らげ、各人が持っているポテンシャルを発揮しやすくするメリットがある。大事なプレゼンの前に、練習に付き合って優しくフィードバックするのと、厳しくフィードバックするのでは、後者だと不要なプレッシャーを与えてしまうこともあるだろう。
一方で、強いて言えばメンバーのポテンシャル以上の能力を引き出すことが、優しいリーダーだと難しいかもしれない。というのも『過大な期待』を寄せることや適度なプレッシャーが、未知の力を引き出すことが往々にしてあるからだ」(横山氏)
もちろん3連覇という成果を残した中嶋監督が、ただ優しいだけのリーダーというわけではないだろう。実際、過去にはセンターを守っていた中川圭太が緩慢な守備を見せた時に、試合が終わる前に途中交代し、暗に喝を入れたこともあった。
なおこの試合後、中嶋監督は懲罰交代ではないことを記者たちに説明し、中川をしっかりとフォローしていた。昨今はハラスメントに対する目も厳しく、必要以上におびえてしまい、ただ「優しいだけ」のリーダーも多いことを考えると、中嶋監督の選手マネジメントは、相当にハイレベルなのは間違いない。
しかし、そうは言っても、過度に厳しいスパルタ型のマネジメントでない、選手に寄り添う時代に即した「優しい」姿勢が、先ほど触れたようなゆるみを生むほころびとなった可能性は、ゼロではないはずだ。これは決して中嶋監督の能力を否定するものではない。ただ単に、「人間とは慣れる生き物である」ということなのだ。
一方、若手抜擢はネガティブに働きうることも
一方で、若手抜擢についても考えたい。
一般に若手抜擢は、“血の入れ替え”によって組織の新陳代謝を促す効果があるとされる。その一方で、抜擢された人材がある種の“選民意識”を持っておごってしまったり、現在活躍しているメンバーやベテランからの反発が生まれたりするデメリットもある。
今季のバファローズでも、今季は中嶋監督が審判に抗議している際に、ベンチで選手たちが談笑している様子をカメラが映したことがあった。当然、ファンから疑問や批判の声が殺到したわけだが、談笑していた選手たちがある種の“選民意識”を持っていたのかは定かではないものの、“緩み”のある選手がいた可能性は否定できないだろう。
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