父親が施設に入ってから、Tさん夫妻は安心して会いに行く回数も減っていました。
施設の職員さんの話では、兄のKさんはTさんとは逆に、施設にしょっちゅう顔を出していたというのです。
兄のKさんと父親の間に、実際どんな会話があったのかはわかりません。
想像でしかありませんが、「弟(Tさん)にすべての遺産を渡す」という遺言書の存在が父親から兄の耳に入り、それに業を煮やした兄のKさんが、父親を言いくるめて新しく遺言書を書かせたのかもしれません。
お金がほしかったわけではありませんが、Tさんには無力感しか残りませんでした。
父の死を悼む気持ちにもなれず、兄とは「縁を切りたい」とまで考えるようになりました。
介護に尽くした2年間を思い出すと、父親に裏切られたような気持ちになり、なんともいえない虚しさに苛まれています。
財産の大半は「介護をしなかった兄」へ渡ることに
ちなみに、実子には遺留分(最低限保証された遺産の取得分)があるため、財産のすべてが兄のKさんに渡るわけではありません。遺留分の侵害請求権を行使すれば、Cさんは4分の1の遺産をもらう権利があります。
しかし、父親の財産の大半が兄に渡ることには変わりません。
父親の遺産は4000万円ほどで、結果的に兄のKさんが約3000万円、Tさんが約1000万円を相続することになりました。
今回のケースのように、遺言によって深い禍根を残さないためにも、みなさんに知っておいてほしいことが2点あります。
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