ブックオフ「続々閉店?」報道の裏で進む大変化 「本を売るならブックオフ」は次第に過去のものに

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「ブックオフだけじゃないブックオフ」とは、どういう意味だろうか。実は、あまり知られていないが、ブックオフは「ブックオフ」以外にも多くの事業を行っている。

例えばその1つが、富裕層向けブランド買取サービスの「hugall」。三越や大丸、高島屋などの大手百貨店に店舗を構え、ブランド品をまとめて買い取るサービスを実施する。ブックオフのイメージとは合わないかもしれないが、「リユース」を核とするブックオフとしては必然的な展開だ。これも客層の拡大(富裕層への拡大)につながっているだろう。

あるいは、読んだ本のリストやその感想を書くことができるサービス「ブクログ」も、同グループに運営が委譲された。元々が書籍に関わるビジネスだけに、こうした事業展開も新しいようでいて、その理念は確かに踏襲されている。

「ブックオフの商材拡大」とともに、こうした事業拡大も行われており、まさに「ブックオフだけじゃないブックオフ」へとグループ全体が進化しているのだ。

ブックオフという「場所」の追求を

ブックオフから考える: 「なんとなく」から生まれた文化のインフラ
『ブックオフから考える: 「なんとなく」から生まれた文化のインフラ』(青弓社)書影をクリックするとAmazonのサイトにジャンプします。

最後に少しだけ、今後のブックオフに期待していることを……。

先ほどの「スーパーバザー」来訪でも書いた通り、現在ブックオフでは「トレカ」商材の扱いを拡大させ、店舗によっては対戦スペースを設けている。さらにはブックオフ主催の「トレカフェス」なんかもやっていて、その力の入れようはすごい。

トレカ自体はメーカーによる安定供給等もあって、今後、利益的には薄くなるかもしれない。けれど、対戦スペースのような「場所」としての価値は、ブックオフがリアル店舗としてさらに追求すると面白いのではないか。

その点で、競合他社といえるTSUTAYAは、トレカ専門店をすでに都内に3店舗作っていて、トレカを通じた「コミュニティ」作りを強調している。

4月にリニューアルした渋谷TSUTAY
4月にリニューアルしたSHIBUYA TSUTAYAにはポケモンカードラウンジも誕生した(筆者撮影)

ブックオフについて書かれたものを読むと、そこで多く見られるのが「ブックオフという場所への愛着」だ。『ブックオフ大学ぶらぶら学部』(夏葉社・2020年)という本では、「ブックオフに救われた」さまざまな人の思い出が多く書かれている。今回の報道でも「ブックオフがなくなって寂しい」という声が紹介されているが、それだけブックオフは「場所」としての価値を持っているのだ。

ブックオフ
郊外のブックオフに郷愁を覚える人も少なくないはずだ(筆者撮影)

特に近年は、アマゾンやメルカリの浸透により、新品であれ中古であれ、ネットを使えば楽にモノを手に入れられる時代。そんな中で「リアルな空間」はその空間ならでは価値を訴求していくことが、ビジネス的にも望ましい方向だろう。

「空間価値」をどのように深め、追求していくのか——。それが、今後のブックオフにとって、重要になるのではないだろうか。

谷頭 和希 チェーンストア研究家・ライター

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たにがしら・かずき / Kazuki Tanigashira

チェーンストア研究家・ライター。1997年生まれ。早稲田大学文化構想学部卒業、早稲田大学教育学術院国語教育専攻修士課程修了。「ゲンロン 佐々木敦 批評再生塾 第三期」に参加し宇川直宏賞を受賞。著作に『ドンキにはなぜペンギンがいるのか』 (集英社新書)、『ブックオフから考える 「なんとなく」から生まれた文化のインフラ』(青弓社)がある。テレビ・動画出演は『ABEMA Prime』『めざまし8』など。

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