モスが始動「5年で100店舗」狙う新業態の"懸念点" 駅ナカにジューススタンド、味も普通に良い、が…
というのも、現在のハンバーガー業界は、これまでにないほど多様な姿になっているからだ。日本でハンバーガーが本格的に広がったのは、1950年代だといわれているが、それが一般化したのが1970年代以降のハンバーガーチェーンの上陸以後。モスもこの時期に創業しているし、マクドナルドが銀座に1号店を構えたのは1971年だ。
それから時を経た現在、2000年中頃ぐらいから、材料や製法にこだわった「グルメバーガー」が話題になり始め、2010年代中頃から急激に店舗数を伸ばし始める。それ以外のハンバーガーも含め、百花繚乱の様相を呈してくる。
『ハンバーガーとは何か?』(グラフィック社 ・2024年)の中で著者の白根智彦氏は、「シェイクシャック」や「カールスジュニア」のような外来系のハンバーガーから、日本独自の発展を遂げたグルメバーガー、ステーキハウスのハンバーガーなどなど、きわめて細かく日本のハンバーガーを分類しているが、これだけいろんなハンバーガーがあるのか……と思わずにはいられない。
チェーンバーガーとグルメバーガーは直接対立しないけれども、「ハンバーガー」に対する認識が一般化するにつれて、競合が増えていったのも確かだろう。同じチェーン系ハンバーガーでいえば、2019年ごろから急激に店舗数を伸ばしているバーガーキングの存在も忘れてはならない。いわば、競合が増えたのだ。
このような中、モスは「ハンバーガー」と並ぶ「次なる一手」を模索しているのではないだろうか。
モスが貫いてきた「人間性の重視」
このような流れから、モスは今回のような新業態を意欲的に進めているといえるが、筆者がこれらの事業展開について興味深く感じているのは、その展開がこれまでのモスの「理念」とは離れていないからである。いわば、業態としては新しくても、「それをモスが行う意味」をしっかりと感じられるものなのである。
元々モスバーガーは、「人間の手作り」にこだわってきた歴史がある。マクドナルドなど他のチェーンが行ってきたように商品の作り置きをせず、その場で一から手作りしていることはモスのウリの1つだ。
チェーンなのにまったくチェーンらしくないオペレーションだが、創業者・櫻田慧の自伝などによると、最初はタマネギなどもその場で切っていて、櫻田の目からはとめどなく涙が流れていたらしい。その様子は、ほとんど個人経営店のようだ。もちろん、今ではそこまでではないけれど、この「手作り」にこだわることは続いている。
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