モスが始動「5年で100店舗」狙う新業態の"懸念点" 駅ナカにジューススタンド、味も普通に良い、が…

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「人間性の重視」などという大げさな表現を使うと、「それは筆者個人の考えでしょ?」と思う人もいるかもしれない。しかし、1970年代はこういった思想を持ってスタートした企業は実は少なくない。

例えば東急ハンズ(現ハンズ)は1976年に、1号店である藤沢店を出して始まったが、「手の復権」というコンセプトがあった。戦後、日本が豊かになったことで訪れた、大量生産・大量消費の画一的な生活から、消費者1人ひとりが主体性を取り戻そう……という意味合いである。

話をモスに戻そう。「機械」ではなく、人の手によるこだわったものをーー。その「人間性の重視」ともいえる精神を、モスは今日まで大事にしてきたのだ。そしてそれは、必然的に「健康に良いもの」や「環境に良いもの」といった方向性を導き出す。

そう考えると、今回のジューススタンドでの「規格外野菜を使ったジュース」といったエシカル消費の方向性も、モスのこうしたブランドとマッチするものだろう。

あるいはカフェ業態「山と海と太陽」では、「山小屋をイメージした内装で、ひと時のやすらぎを与える居心地の良い空間に仕上げた」というが、やはり、ある種の「人間性」がそこには現れている。

文化事業にも力を入れてきたモス

モスのこうした「人間性の重視」は、文化事業への積極性にも表れている。

例えば、今年のモスで話題になったことの一つに「モスレコーズ」の設立発表がある。

モスレコーズでは、全国のモスバーガー店舗で働くスタッフを対象にオーディションを行い、最優秀者に対して、このレーベルからのデビューを含め、ミュージシャンとしてのデビューをバックアップするという。人間の手仕事を応援する精神が見える。

モスレコーズ
MOS RECORDS第1回オーディションの画像(画像:MOS RECORDS HPより)

しかし、私が以前指摘した通り、こうした小売企業での音楽事業のタイアップは過去の例を見ても難しく、モスレコーズの試みもどれぐらい成功するかわからない。理念は良くてもビジネス的な意味での成功があるのかどうか、わからないのだ。

ただ、現在進めているジューススタンドのような新業態は、ここまでで指摘してきた通り、モスの理念を受け継ぎつつ、ビジネス的にも時流を捉えたもので、面白いのではないかと感じているのだ。

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