ウクライナ侵攻で浮かび上がった「GDP神話の噓」 経済制裁で苦しむのは「消費重視」の西側世界

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GDPの指標として、民主主義が成熟した国においてはサービス業の数字が入っており、このサービス業の数字がかなりの曲者です。たとえば、トランプの不倫裁判にかかる費用も、不倫のもみ消し料も、すべてGDPに計上されます。GDPは1国の付加価値の合計だから、こうしたものまで計上されてしまうのです。

アメリカの作家ジョン・デ・グラーフと経済学者デイヴィッド・K・バトカーは『経済成長って、本当に必要なの?』の中で、GDPの問題点を指摘しています。

今は物があふれていて、所有権の移転も多くなりました。交換して所有権が移転するだけなら付加価値は生じないので、GDPには反映されないし、税金もかからない。極端な話、「メルカリ」や「アマゾン」などを禁止すれば、GDPは上がるかもしれません。日本のGDPが伸び悩んでいるといっても、セカンドハンド(中古品)でものを回すことが多くなっているだけです。

ネット空間での物と物の交換のような取引も相当な数に上りますが、そうしたものはGDPに計上されません。GDPのみで経済を判断することには問題が多すぎるのです。

基本的には、GDPではなく、購買力平価で経済の動向を測るのが現実的といえます。購買力平価の実体に近づけて測るようになると、全然違う様相が見えてきます。

そうした計測で見れば、日本はまだ豊かであるという結果が出ると思います。私たちの見えないところで、かなりの数の品物の流れが起こっているはずです。そうした現象を見ずにGDP中心主義を押し通していくと、実体経済というものが見えなくなってしまうのです。

旧ソビエトではサービス業を入れない統計方法も

しかし多くの経済学者は、GDP神話を変える気はないでしょう。GDPへの信仰は一種のイデオロギーだから、簡単に変わらないのです。経済統計という点でいえば、旧ソビエトでは、サービス業を入れない独自の統計を使っていました。旧ソビエトの統計方法を使って今の日本の経済状態を測り直したら、そのほうが実体に近いかもしれません。

ところで、GDP神話の崩壊が明確に理解できるようになるのは、戦争が起きたときです。

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