ウクライナ侵攻で浮かび上がった「GDP神話の噓」 経済制裁で苦しむのは「消費重視」の西側世界

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エマニュエル・トッドは『我々はどこから来て、今どこにいるのか?』の中で、ウクライナ紛争にともなうロシアへの経済制裁について、

一見、『戦争』を回避するための『平和的手段』に見えても、その究極の目的は『相手国の破壊』にある、かなり暴力的な手段なのです。現在、西洋諸国とロシアが互いに科している経済制裁は、長期化すればするほど、双方にダメージを与えるでしょう。しかし、西側メディアの論調とは違って、ロシア経済よりも、『消費』に特化した西側経済の脆さのほうが今後露呈してくると私は見ています。(『我々はどこから来て、今どこにいるのか?』)

と述べています。

この言葉は、生産する国(ロシア、日本、中国など)ではなく、消費する国(アメリカやフランス、イギリスなどの西側諸国など)のほうが、戦争が起きれば、経済的ダメージをより受けやすいという点を的確に示しています。

なぜなら、戦争が長期化すればするほど、過酷になればなるほど、食料や武器、エネルギーなどの実際につくり出される物資(商品)が重要になっていくからです。

80年も使い続けてきた「惰性」にすぎない

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先に触れた『経済成長って、本当に必要なの?』には、「ノーベル経済学者のジョセフ・スティグリッツとアマルティア・センは、GDPを増やそうとする政策が、国民の生活の質を貶めていると指摘している。この時代遅れの経済目標を使い続けている理由は、80年間も使い続けてきた惰性にすぎない」という記述もあります。

この発言は、GDPがある国の現在の経済状況を測るための一基準にしかすぎず、それによって国民1人ひとりの生活の真の満足感や幸福感といったものは測ることができないということを意味しています。

経済学者は自明のものとしてGDPを経済や財政の分析に使っていますが、もはやそれだけでは国力を測ることができないことに気がつくべきだと私は思います。

ひと昔前にもてはやされた基準だけを追い求めることで、失ってしまうもののほうが大きいということや、そもそもその数字では測れないものが多数存在していることを私たちは自覚すべきなのです。

佐藤 優 作家・元外務省主任分析官

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さとう まさる / Masaru Sato

1960年、東京都生まれ。同志社大学大学院神学研究科修了。

2005年に発表した『国家の罠 外務省のラスプーチンと呼ばれて』(新潮社)で第59回毎日出版文化賞特別賞受賞。2006年に『自壊する帝国』(新潮社)で第5回新潮ドキュメント賞、第38回大宅壮一ノンフィクション賞受賞。『読書の技法』(東洋経済新報社)、『獄中記』(岩波現代文庫)、『人に強くなる極意』(青春新書インテリジェンス)、『いま生きる「資本論」』(新潮社)、『宗教改革の物語』(角川書店)など多数の著書がある。

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