このところ報道や政策立案における「エビデンス」の重要性への認識が高まっている。とくに中国のような不透明性が極めて高い対象について何らかの判断を行う場合、統計資料などのエビデンスによる裏付け、ならびにその検証は極めて重要となる。
その意味で、11月5日に放送されたNHKスペシャル、「調査報道・新世紀 File1 中国“経済失速”の真実」はすばらしい試みだった。この番組は、各地方の統計資料などからデータを収集し分析することによって、ベールに包まれた中国、とくに地方ごとの経済活動を明らかにし、将来予測につなげようとするものだ。
研究者がよく利用するデータベースにおいて公開されているデータの種類を年ごとのグラフにし、近年その数が顕著に減少していることを示すなど、シンプルだが労力のかかる検証作業がその楽屋裏まで含めて紹介されていた。
ただ、番組には若干勇み足と思えるところもあった。米シカゴ大学のマルティネス教授による、衛星画像からの夜間光データを用いたGDP(国内総生産)統計の検証に関する研究を紹介したくだりだ。
これは「中国のGDP成長率は『ごまかし』の利かない夜間光を基にした推計値に比べると3割以上過大評価されている」という氏の主張を紹介し、データの公開に消極的になった中国のGDP統計の水増しを示唆するものだった。
夜間光=GDPとは言えない
確かに、夜間光の強度を経済活動の代替指標として用いる研究は近年盛んに行われている。だが、その扱いには注意も必要だ。一国の経済活動は夜間光に反映されるものだけではないし、日照時間、人口密度などによりGDPとの関係も異なってくるため、夜間光をそのままGDPの代替変数として用いることはできないからだ。
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