ウクライナ侵攻で浮かび上がった「GDP神話の噓」 経済制裁で苦しむのは「消費重視」の西側世界

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たとえば、2024年2月、世界のGDPにおける順位において日本は3位から、ドイツに追い越されて4位に落ちたということが大きな話題になりました。

2024年2月15日の読売新聞には、「内閣府が発表した2023年の名目国内総生産(GDP)は591兆4820億円だった。ドル換算すると、4兆2106億ドルとなり、ドイツよりも2400億ドル少なく、世界4位に転落した」という内容の記事が書かれており、多くのジャーナリストはこのニュースを日本経済の凋落というニュアンスで捉えました。

しかしドイツは、ウクライナ紛争の影響で、ロシアからパイプラインで送られてきていた天然ガスの供給がストップしたため、エネルギー価格が約4倍に高騰し、GDPに大きく反映されてしまっているのです。こういう点に関しては正しく報道されず、日本のGDPの順位が下がった点だけがクローズアップされて語られているのが真相です。

さらに、円安が起きています。そのため日本の経済力をドル換算のGDPだけで見れば、どうしても下降している数字が出てきてしまいます。

これらの点をふまえれば、国家の経済力を示すものとしてのGDPの指標は、すでに崩壊しているといえます。それがはっきりと見える形をとるのは、繰り返しになりますが戦争が起きたときです。

結局、国力というものが端的にわかるのは戦争に強いか弱いかであって、当然戦争に強い国のほうが国力は上なのです。

アメリカの弱体化が暴く「GDPの噓」

今回、まさにロシア・ウクライナの紛争で、「戦争の強さ=国力の大きさ」が如実に示されました。2023年の時点でGDPがアメリカの約7パーセントにすぎないロシアが、アメリカの支援するウクライナと互角、あるいはそれを凌駕する戦いを見せている現実を見ると、GDPがその国の実力を反映していないのはもはや明らかです。

ウクライナ問題とパレスチナのガザ地区をめぐる問題で、アメリカの今の実力はこんなものだということが世界に知られてしまいました。ロシアにしても、ハマスにしても、中国にしても、じつはその点をよく見ています。

アメリカはなんとかこの状況をうまく乗り切りたいと思っていますが、アメリカの国力自体が弱体化している今、それは難しいでしょう。

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