筆者を含めた大方のロシア経済ウォッチャーは、2024年のロシア経済が、3月の大統領選をピークに成長が鈍化すると予測していただろう。実際に、ロシアの実質GDP(国内総生産)は、1~3月期に前年比5.4%増と前期の同4.9%増から成長を加速したが、4~6月期は同4.1%増、7~9月期には同3.1%増と、徐々に減速した。
成長のパスは予測のとおりに推移したわけだが、一方で成長率の水準は、大方のロシア経済ウォッチャーの見込みよりも高かったという結論になる。筆者は1%台と2023年の2%台成長(実績は3.6%増)から減速すると予測していたが、2024年1~9月期の間に経済は3.5%も成長しており、通年でも3%台前半での着地になりそうだ。
ロシア経済の根強さの裏にある実情
物価と通貨の番人であるロシア中央銀行でさえ、2023年11月に発表した『金融政策レポート』の中では、2024年の成長率は0.5%から1.5%の間に鈍化すると予測していた。つまり、2024年のロシア経済は、大方の予測を上回るテンポで成長したことになる。だからといって、ロシア経済が真の意味で好調だったかというと、それは違う。
結局のところ、こうした予測を裏切るほどの堅調をロシア経済にもたらした最大のドライバーは、やはりウクライナとの戦争の長期化で増大した軍需にあったのだといえよう。ロシア財務省は歳出統計の細目の公表を停止しているため、国防費の具体的な数字は追えないが、一方で予算ベースの国防費はインフレ率を上回るテンポで増加している。
具体的には、2025年予算の国防費は前年から25%増加している。これは消費者物価ベースで18%程度、GDP物価指数ベースで13%程度という2024年のインフレ率を上回るテンポだ。このようにハイピッチで軍需が膨らんだ結果、いわゆる「軍事ケインズ主義」に則った経済効果が生じ、それがロシアの経済成長を押し上げたと判断される。
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