今後の欧州経済を考えたとき、最大の懸念要因はドイツとフランスの政情不安であることは誰もが認めるところだろう。ドイツではオラフ・ショルツ首相が率いる「信号連立政権」が崩壊、年明け2月に総選挙が前倒しで実施される。現状では、与党である中道左派の社会民主党(SPD)の敗北が必至であり、政権交代は確実な情勢である。
代わって中道右派のキリスト教民主同盟(CDU)と姉妹政党の同社会同盟(CSU)から成る同盟(Union)が、第一党になる見通しである。一方で、躍進が予想される右派の「ドイツのための選択肢」(AfD)との協力をどの主要政党も拒否していることから、Unionを首班としてSPDが参加する大連立内閣が成立する展開が有力だ。
フランスの政情はドイツ以上に深刻だ
大連立の場合は決められない政治に陥りがちであるが、とはいえ短期的には政情の安定化が望める。その点、ドイツはまだ明るい兆しがないわけではないが、フランスはより深刻な事態に陥っている。下院は左派、中道、右派の三つ巴の構図と化しており、うち左派と右派が結託して、中道のエマニュエル・マクロン大統領を追い詰めている。
9月に成立したばかりのミシェル・バルニエ内閣も早々に崩壊。マクロン大統領はすぐに後継の政権の組閣に着手したが、当然、協議は難航しており、また組閣に成功したとしても、いつまで持つか定かではない。マクロン大統領は任期満了となる2027年5月まで続投すると改めて宣言したが、国内では辞任を望む有権者の声も強まっている。
政情不安は、短期的には予算の執行と関わってくる。ドイツもフランスも、次年度予算が成立していないため、年明け以降は暫定予算が執行されることになる。暫定予算の下では最低限の政府活動しかできないため、景気に下押し圧力がかかる。また国債の金利も上昇するため、長期金利の経路からも景気に対して下押し圧力がかかることになる。
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