英国の景気が再び停滞している。例えば、2024年7〜9月期の実質GDP(国内総生産)の確定値は前期比横ばいと、速報値の同0.1%増から下方修正された。また10月の月次実質GDPは前月比0.1%減と、9月(同0.1%減)に続いてマイナスとなっている。
こうしたことから、2024年後半の英国経済はゼロ成長になったと考えられる。
景気の停滞の理由の1つとされるのが、2024年7月に就任したキア・スターマー首相が率いる労働党政権による経済政策に対する不信感の高まりだ。
英国の経済政策不確実性指数(新聞記事のテキスト情報を用いて作成した不確実性指標)を確認すると、英国の不確実性は新政権が発足してから、2022年9月以来の水準まで急激に上昇している。
2022年9月といえば、当時のリズ・トラス首相が、身の丈に合わない減税計画を発表したため、金利が急騰し通貨が暴落するなど英国の金融市場が動揺した時期だ。いわゆる「トラス・ショック」が生じたわけだが、このショックはトラス元首相の即時の辞任と後継で財政健全派のリシ・スナク前首相の就任ですぐに収束した。
トラス・ショックとは異なる混乱の要因とは
しかし、今回は様相が異なる。
現在、英国を包んでいる不確実性は、スターマー首相が率いる労働党政権の財政政策運営に対するものだ。今年4月からスタートする新年度予算で、労働党政権は、企業の負担増に基づく財政拡張を試みる。
とりわけ問題となっているのが、国民保険料の雇用主負担が増加することだ。この負担の増加が、企業のマインドを冷やしているもようである。
英国立統計局が発表した最新の2024年10月失業率は4.3%と、引き続き歴史的な低水準ではある。そのため、英国では完全雇用の状態が続いているように見受けられる。
しかし民間の調査会社によると、英国の企業は2024年末にかけて、雇用の整理を進めたようだ。その最大の理由は、新年度に国民保険料の雇用主負担が引き上がることにあったという。
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