同志社大学・太田肇教授の新モチベーション論(第8回)--表彰にはポイント制など明確な基準が必要

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同志社大学・太田肇教授の新モチベーション論(第8回)--表彰にはポイント制など明確な基準が必要

同じような表彰制度を取り入れている会社でも、それが社員のモチベーションアップに大きな効果を上げているケースもあれば、逆にほとんど効果が見られないというケースもある。

両者を分けるポイントのひとつは、受賞者が何を基準に選ばれたのかである。一般的にいうなら、年功や順番で選ばれるとか、不透明なプロセスで選ばれるより、明確な実績に基づいて選ばれるほうが、表彰される側はうれしいし、やる気も出る。

そして何を基準に授賞するかは、組織のポリシーや姿勢と深くかかわってくる。受賞者は「望ましい社員像」を体現した人であるべきなのだ。

このような視点から、ひとつのモデルとしてANA(全日本空輸)の表彰制度を取り上げてみよう。ANAの全グループ社員および総代理店、協力会社、海外地区社員を対象にした「エクセレント・サービス・アワード」という表彰制度がある。

各部門を代表する選考委員が、2カ月間に「お客様」から届いた「お褒め」のリポート(約500件)をすべて確認し、「あんしん、あったか、あかるく元気!」というグループブランドにふさわしく、「お客様と共に最高の歓びを創る」というブランドビジョンにも合致し、なおかつ「お客様」と仲間の双方から受け入れられる事例を選考する。

したがって受賞者は客室乗務員や空港係員に限られるわけではなく、整備工場見学担当者、空港係員、客室乗務員の三者によるチームプレーが受賞した次のようなケースもある。

あるとき、病気がちな夫婦が羽田空港の整備工場へ見学に来られた。その際の対応が良かったことに加え、見学担当者の勧めもあって後日、その夫婦が同社の便に搭乗された際にも、空港や機内で連携のとれた対応がなされたということで、夫婦からお褒めの言葉が届いた。そのチームワークに対して賞が贈られたのである。

表彰セレモニーは、年に一度、すべての受賞者を羽田空港に招待し、CS担当役員も参列する中なかで事例紹介、職場の上司・同僚からのサプライズ・ビデオレター放映、ならびに食事会が行われる。

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