カナダが"アジア系と共生する道"を選んだ経緯 アメリカよりも欧州、なかでも北欧に似ている

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なかでも地域政党と言いながら全国第3位の議席数を持ち、発言権を持っているのが、ケベック州のケベック党(Parti Québécois)。ケベック州はフランス語が公用語でフランス文化を重んじ、独立運動が起きた過去もあります。ただし現在は「カナダの一員として独自の文化を守る」という立場で、これも多文化共生につながっています。

アメリカもまた広大な領土と50もの州をもつ国ですが、あれだけさまざまな民族や人種がいるのに、特に勢力のある地域政党はありません。

「カリフォルニアにヒスパニック系の政党、ニューヨークにユダヤ人の政党」

そうなっても不思議はないのに、文字通り“ユナイテッド(統合)”されているのかもしれません。

大国から距離を置く「北米の北欧」

多文化共生で移民に門戸を開く国際協調路線で、苛烈な自由競争よりも、国民生活にある程度、政府が介入しながら協調を選ぶ……。

教養としての世界の政党
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「自由党にしても保守党にしても、アメリカよりもヨーロッパ、なかでも北欧に似ている」

カナダの政党に詳しい専門家と議論していると、私はそう感じます。それはすぐ隣の超大国から距離を置くという、ある種の知恵ではないかと思うのです。

カナダの場合、アメリカという超大国がすぐ南にあります。国内は競争社会、国外でも“世界の警察”もしくは“利害の対立”で、常に争いの渦中にいる、ドラえもんで言うならジャイアン的なお隣さんです。

北欧諸国の場合、“南側のお隣さん”はドイツ、フランス、イタリア。どの国も中世には領土の奪い合い、18世紀から第2次世界大戦には植民地の取り合いと、激しい戦争を繰り返してきました。そこで距離を置いていたのが北欧です。

「南のほうの人って激しすぎるよね。ちょっと一歩引いておこうか」

さらに北欧の場合、東にはロシアという“ジャイアン的なご近所さん”もいます。北欧、特にフィンランドは歴史的にロシアに巻き込まれていますし、ロシアのウクライナ軍事侵攻を受けた北欧諸国は「いやいやいや、私たち近所なだけで関係ないので!」とNATO寄りになっています。

このように見ていくと、北欧とカナダは似ていると感じます。カナダのリベラルとは、強大なお隣さんとは違う、独自の多文化共生の道を模索した結果なのかもしれません。

山中 俊之 神戸情報大学院大学 教授、国際教養作家、ファシリテーター

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やまなか としゆき / Toshiyuki Yamanaka

1968年兵庫県西宮市生まれ。東京大学法学部卒業後、1990年外務省入省。エジプト、英国、サウジアラビアへ赴任。対中東外交、地球環境問題などを担当。首相通訳(アラビア語)や国連総会を経験。2000年、株式会社日本総合研究所入社。2009年、稲盛和夫氏よりイナモリフェローに選出され、アメリカ・CSIS(戦略国際問題研究所)にてグローバルリーダーシップの研鑽を積む。2010年、グローバルダイナミクスを設立。累計で世界96カ国を訪問し先端企業から貧民街、博物館・美術館を徹底視察。ケンブリッジ大学大学院修士(開発学)。高野山大学大学院修士(仏教思想・比較宗教学)。ビジネス・ブレークスルー大学大学院MBA、大阪大学大学院国際公共政策博士

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