「多角化」戦略を加速する富士フイルム、液晶フィルムや化粧品に資源投入
富士フイルムホールディングスはデジタルカメラの新分野に参入する。10月5日に都内で開催した新製品発表の会見で、「来年春までにミラーレス一眼カメラを投入する」と発表した。
一眼レフからミラー部分を取り除いた構造を採用するミラーレスカメラは、目下成長が著しい。国内では今や、一眼レフ市場に占める比率が4割を超える。同社はこの成長分野に参入することにより、カメラ事業の底上げを狙う。
両翼戦略--。富士フイルムのカメラ事業はしばしばそう評される。コンパクトデジカメは価格帯が3万~4万円に集中するのが一般的。が、同社の製品は1万円以下から12万円までと、まさに両翼に価格の幅を広げる。
新興国を中心に展開するのが「100ドルカメラ」と呼ばれる低価格デジカメ。画像加工やスライド機能などの付加機能をそぎ落とした。一方で、価格10万円以上の高級コンパクトデジカメも手掛ける。
今年3月に発売した「X100」は価格12万円と高額ながら、販売は年間計画の10万台を上回る勢いだ。「値段が高くても性能さえよければ、ユーザーに支持される」と、古森重隆社長は語る。
過去2回の“大ナタ” 事業構造を大幅に転換
同社はこの10年間、事業の多角化を進めてきた。かつて全社売り上げの50%以上を占めていた写真フィルム事業は、デジカメ登場とともに下降線をたどった。現在は化粧品や液晶フィルムを軸とする「インフォメーション事業」、2001年に連結化した富士ゼロックスが担う複合機などの「ドキュメント事業」、そしてデジカメなどの「イメージング事業」が柱だ。
多角化推進と同時に、2度にわたる大規模なリストラも実施した。最初は05年。業績悪化に伴い写真事業にメスを入れ、人員5000人を削減。加えて、国内外の写真現像所拠点を統廃合した。