しかし、店の前の道路の拡幅工事のため立ち退きとなり、2023年12月末をもって閉店となった。店主の星野能宏さんは移転も一時考えたが、物件取得が難しく断念したという。
「クサウマ豚骨ラーメンでの物件取得は極めて難しいです。そもそも臭いスープを作るのは大変難しく、臭く作れたとしても、近隣住民からの苦情を受け、匂わないスープに変更せざるをえないことになると思います」(元「きら星」星野さん)
その独特な豚骨臭は好き嫌いが分かれるため、苦情になりやすいというのだ。博多であれば街に豚骨ラーメン店があるのが当たり前の光景だが、新店として都内でオープンするには高いハードルがある。
家系ラーメンの台頭と高難度の技術
(2)家系ラーメンに顧客を奪われている
そして、一定のファンを囲い込めれば人気店になる可能性はあるが、まずスタート時の顧客確保が難しいという問題もある。
「同じ豚骨スープであれば『横浜家系ラーメン』のほうが比較的作りやすく、さらに以前より認知度も上がってきているため、最近では家系ラーメンで出店する傾向が見られます。さらに、博多豚骨ラーメンは男性客には麺量が少なく、替え玉前提でお腹を満たすしかないため、麺量が多く、ライスが無料で安価で提供できる家系ラーメン店に顧客が流出している現状もあります」(星野さん)
(3)技術の習得が難しい
熟成臭のあるクサウマの豚骨ラーメンは「呼び戻し」の製法が一般的だ。寸胴鍋を決して空にせず、古いスープに新しいスープを継ぎ足しながら作る製法である。その技術を会得するのは本当に難しいのである。
東京・赤坂にある「博多ラーメン 和」の店主・馬場圭佑さんは修行をせずに独学で博多豚骨ラーメンの作り方を編み出した。YouTubeの動画をくまなく見て研究し、創業から10年になる今年、ようやく満足のいく一杯にたどり着いた。
「豚骨オンリーでスープを仕上げるには技術が必要で、毎日のブレも大きいため、作り方の継承が大変難しいです。基本的には見て学び、感覚を研ぎ澄ますしかなく、簡単にできるものではありません。よく豚骨ラーメンの職人のことを“感覚派”という人がいますが、そもそも数値化できるものではないので感覚を育てるしかないのです」(「和」馬場さん)
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