中華ECサイト「Temu」のテレビ大量出稿に思うこと 芸能人も活用、知名度上昇も…"意識すべき"現実

✎ 1〜 ✎ 100 ✎ 101 ✎ 102 ✎ 最新
著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

繰り返すが、これはTemuを指していない。あくまで架空の例だ。そのとき、メディア人としては、このスポンサーからの広告を出稿してもらうべきだろうか。貧すれば鈍する、ではないがお金になるから、と出稿を引き受けていたら、そのメディアの掲げる企業ポリシーはなんの意味もないことになりはしないだろうか。

ところでTemuの話に戻す。現在ではコストをどれだけかけても知名度上昇に邁進している。実際、案件に多くの芸能人が登場している。知名度やシェアがECの勝者を決める以上、それは一つの戦略である。また急拡大に伴ってさまざまな批判も出てくるのは当然だから、同社に批判が集まるのも当然かもしれない。

矛盾する消費活動

ところで、私は冒頭でSDGsがあまり売り上げに結びつかない現実を描いた。そして、激安のモデルを全面に出したTemuが躍進しているさまを紹介した。そして矛盾するようだが、10年、20年の成長を目指せば、SDGsやらコンプライアンスに努めなければならない、というのが私見だ。

買い負ける日本 (幻冬舎新書 696)
『買い負ける日本』(幻冬舎新書)。書影をクリックするとAmazonのサイトにジャンプします

これはTemuが悪しきことをやっているという意味ではない。もっと積極的に環境、人権、労働、個人情報保護などのコンプライアンスに関する開示をしてほしいと思う。

SNS上にはTemuにたいする不安を吐露する投稿が多い。人々や潜在的消費者を安心させるためにも。何が逆説的かというと、SDGsが売り上げに結びつかない理由は、そんなことを喧伝しないでも信頼してもらっている、という意味になるからだ。ことさらSDGsを叫んでも、収益が拡大するわけではないが、当然のことをしなかったら信頼が崩壊する。

その意味でも、Temuは積極的に宣伝出稿すると同時に、不安や疑問に感じている人々と積極的に広報のコミュニケーションをとったほうがいいのではないだろうか。

短期的ではなく中長期的な観点から同社も意識したほうがいいだろうし、案件に登場する芸能人や、出稿を受けるメディアも考えておきたい。

坂口 孝則 未来調達研究所

著者をフォローすると、最新記事をメールでお知らせします。右上のボタンからフォローください。

さかぐち・たかのり / Takanori Sakaguchi

大阪大学経済学部卒。電機メーカーや自動車メーカーで調達・購買業務に従事。調達・購買業務コンサルタント、研修講師、講演家。製品原価・コスト分野の分析が専門。代表的な著作に「調達・購買の教科書」「調達力・購買力の基礎を身につける本」(日刊工業新聞社)、「営業と詐欺のあいだ」(幻冬舎)等がある。最新著は「買い負ける日本」(幻冬舎)。

この著者の記事一覧はこちら
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

関連記事
トピックボードAD
ビジネスの人気記事