高濱:近視は抑制できるということを知っている親自体が少なそうですね。
窪田:日本ではまだまだ少ないです。アメリカや中国、台湾などの「意識の高い親」の間では、もはや「常識」といってもいい話なのですが。
これは台湾で10年以上前から国を挙げて取り組んできた施策にまつわるデータです。
窪田:台湾では2010年に、小学生を対象に学校で1日2時間程度、屋外活動をすることを義務づけました。その結果、子どもの近視割合が2012年から減少に転じました。WHO(世界保健機関)も2019年に視力に関する最初の報告書を発表し、その中で「最も頻度の高い眼疾患である近視と外遊びの重要性」を指摘しています。
高濱:私も経営している学習塾では子どもの野外活動を一貫して重要視してきましたが、外遊びが子どもの目にもよいとは……。子どもの心身の成長に外遊びはやはり必要不可欠なのですね。
「目は脳の一部」という認識を持ってほしい
窪田:今、高濱先生は「心身」とおっしゃいましたが、実は「目は脳の一部」なんです。目という組織は、脳の一部が飛び出してむき出しになっている中枢神経の一部で、身体の中で最も血流量が多い臓器は目の網膜といわれています。 つまり、目にいいということは、脳にもいいといえると思います。目の健康は、脳や心身の発達にも影響を与えているわけです。
高濱:今、多くの有識者の方々が子どもの外遊びを推奨するようになりました。医学面においても推奨されるというのは、外遊びの大切さを長年唱えてきた私たちにとって喜ばしいことですね。
窪田:「子どもの近視が増えている」と警鐘を鳴らすと、必ず「スマートフォンやタブレットの見過ぎだからでしょう」と指摘されます。しかし実は、スマホやタブレットが子どもたちの近視の原因であるというエビデンスは存在しません。
これまでも1990年代後半からパソコンが、2000年代後半にスマートフォンが急速に普及するタイミングがありましたが、近視人口が増加するスピードは一定で変わっていませんでした。したがって、「低年齢でスマホを持ち始めたから近視率が上がった」と結論付けるのは短絡的だと思います。