高濱:まさかそこまで増えていたとは……。私は「花まる学習会」という、園児から小学生向けの学習塾を30年以上経営していますが、確かに小学1年生の教室に入ったとき、「メガネをかけている子の割合が増えているな」というのは肌感覚としてありました。
窪田:高濱先生も教育の現場でそう感じていらっしゃいましたか。あまり日本では認識されていないのですが、近視は将来、失明につながる深刻な眼科疾患発生率を何倍にも上げてしまう要因とされています。
「自分が失明するなんてありえない」と思われるかもしれませんが、日本眼科医会によると、まったく見えない、あるいは極度に視力が落ちている「視力障害」のある人は国内で推定160万人にのぼるといわれています。
高濱:近視にそこまでのリスクがあるとは私自身知りませんでした。
窪田:これは、一つの社会問題だと思います。いかに社会全体で「近視」を防いで将来にわたって目の健康を守るかが重要になってきます。
「近視は遺伝だから仕方ない」と諦めないで
高濱:子どもにメガネをかけさせることに対する親の抵抗感も弱まりましたよね。ひと昔前は、メガネをかけていると「メガネ」とあだ名がつけられたりするので、親も子もできるだけ近視にならないように心がけていた気がします。
窪田:今は、「親が近視だから子どもが近視になるのも仕方がない」「視力が落ちたらメガネをかけさせればいい」と考える親御さんが多いですね。でも、眼科医としてその考え方には警鐘を鳴らしたいと思います。
先ほどもお話ししたように、近視になると将来の失明リスクが何倍にも跳ね上がることもそうですが、今、世界では「子どもの近視進行は抑制できる」ということが常識になりつつあるからです。
特に海外では、進行抑制に成功した事例がいくつも発表されていますし、臨床研究も進んでいます。ぜひそのことを日本の親御さんにも知っていただきたいのです。