いつの時代も「今時の若者は..」と、世代間ギャップを感じる中高年世代は思うのだろうが(40代である筆者の自戒も込められている)、過去10年余りの若年世代の「草食化」は、そうした中高年の思いにフィットしていたのではないかということだ。
評論家の古谷経衡氏は、「『若者の草食化』という概念は、社会情勢を主要因とした若者の貧困・困窮といった問題の責任を回避しようとして打ち立てられた『若者観』である」(「欲望のすすめ」ベストセラーズ2014年)と指摘しているが、筆者も同感である。
ちなみに、日本では米国のように若年世代の親との同居率をはっきりと示すデータがない。そこで、5年ごとに行われる国勢調査において、20~34歳の未婚者で両親と同居している割合の推移をみると、デフレが始まった1995年(40.3%)から2010年(45.4%)までの15年間で5%ポイント増えている。
先の米国と日本では調査している統計が異なるので、水準を比較するのは難しい。だが、特に同調査では、30~34歳の未婚者で親と同居する割合がこの15年間で、18.8%→31.3%と12.5%も高まっており、この世代で「パラサイト化」が急激に進んだことが大きな特徴である。
上記のデータは、リーマンショック後の米国と同様、日本ではデフレと景気停滞の長期化で、安定した職の機会を得ることが難しくなり、親と同居することを選択した若年層が増えていた可能性を示している。
アベノミクス成功で、脱パラサイト化&脱草食化へ
もちろんこうした経済的な要因によって、生活スタイルの変化のすべてが説明できるとは思わない(晩婚化がもたらした側面もあっただろう)。だが若年世代のパラサイト化や草食化は、1990年代後半からのデフレと経済停滞が招いた「若年世代の経済的困窮」が後押しした現象だったように思える。
2013年にアベノミクスが始動してから2年半が経過し、完全失業率は3%台半ばまで低下、賃金上昇の兆しがみえ正社員の数も少しずつ増えてきた。今後、日本銀行が2%のインフレ目標実現にこだわり金融緩和を続ける中で、1990年半ば以前のように失業率は2%台まで低下し、労働市場の需給が正常化(若年世代の人手不足の恒常化)が続くだろう。そして、これまで減少し続けた正社員も、なお増え続けると予想される。
そういう経済状況が長期化すれば、経済的な理由で親と同居を選択した若年世代は、かつてのように減るのではないか。アベノミクスの成功によって、これまで続いたパラサイト化や草食化という風潮は、今後変わる可能性があると筆者は考えている。
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