金融緩和強化を主軸とするアベノミクスの評価について、さまざまな議論が続いている。「黒田体制」のもと始まった日本銀行の金融緩和強化が、消費・設備投資などの総需要を押し上げ、経済の需給バランスを改善させ、デフレ圧力を和らげインフレ率を引き上げる効果があったことを否定するのは難しいだろう。
2014年の消費増税で急ブレーキがかかったが、強力な金融緩和による景気下支えによって同年末から景気は再び回復に転じた。現在の循環的な景気回復は長期化すると筆者はみている。
株高は「一部の富裕層」だけのためではない
金融緩和強化に懐疑的な論者は、過去2年余りで起きた経済環境の改善や金融市場での成果を棚に上げて、2014年後半からのインフレ率低下で2%のインフレ実現が遠のいたことや、資産購入拡大がもたらす潜在的な弊害、などを盛んに強調している。
また、金融緩和のわかり易い効果は、資産市場による株価や不動産価格の上昇や円安だが、それにのみフォーカスして、アベノミクスは「一部の人」のみに恩恵が行き渡る点を強調し、金融緩和懐疑論に同調している。
ただ言うまでもないが、われわれの経済活動はさまざまな面でつながっており、例えば株高などの資産効果として、消費が増えれば小売りやサービス産業に携わる企業や従業員の所得拡大をもたらす。
また日本人の年金資産が一部であっても株式などで運用されているのだから、資産市場価格上昇は、日本人全体の年金給付金を底上げする。長年続いたデフレと資産デフレの悪循環に歯止めをかける金融緩和政策の効果は、なかなか理解されないが、これら以外にもさまざまな経路を通じて日本人の経済的な豊かさを高める。
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