そして、労働市場の需給改善は、足元で、賃金上昇と同時に「雇用者の質の変化」という格好でも顕在化しつつある。
もはや「ブラック企業」に人は集まらなくなった
労働力調査によれば、2015年1-3月の雇用者の伸びを、雇用形態別にみると、正規社員の労働者が前年から42万人増えていた。2011年の大震災直後の混乱期を除けば、正社員が40万人規模で増えるのは2006年以来である。
アベノミクス発動以降、2013年は正社員の雇用者数は減少する一方で、非正規社員が大きく伸びる格好で全体の雇用者数が伸びていた。しかし、2014年後半から正社員の減少に歯止めがかかり始め、2015年1-3月には正社員が伸びる一方で、非正規社員の伸びが限定的になる状況となっている。
賃金が伸び始めたことと同時に、労働市場の需給改善をうけて、企業が人手確保のために正社員の採用を増やし始めているとみられる。
2013年の金融緩和拡大を起点とした労働市場の改善はいくつかのステップを経て、労働市場の改善とともに家計の所得拡大のすそ野を広げている。
いわゆる「ブラック企業」が社会問題になったが、アベノミクス発動後、効果がいきわたってきた最近ではそうした話題を耳にすることが少なくなったのも、労働市場の需給改善によって、極めて低い賃金水準をテコに利益率を高めるビジネスモデルが難しくなったからだろう。
なお、正社員の給与水準は高いため、正社員の雇用が増え続ければ、それは賃金水準の底上げをもたらす。これは、賃金上昇が消費底上げにつながる景気回復の好循環を後押しする効果がある。
さらに、賃金水準が高い労働者が増えることは、生産性が低い企業から、生産性が高い企業へ、労働者がシフトする側面もある。
金融緩和強化を起点とした景気回復が長期化することで、賃金水準が高い正社員を必要とする生産性が高い企業が増える。それは、長期的に日本の労働生産性を向上させる可能性があると筆者は考えている。
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