そんな中で、先日興味深いデータを解説しているレポートを目にした。
米国において、両親と同居する若年世代(18~34歳)の動向を解説したレポートだ。ポイントは2つあり、(1)2008年のリーマンショック後の景気悪化によって米国で親と同居する若年世代の割合が従前の27%前後から2012年に31%まで高まっていた、(2)2014年からの経済安定でこの割合が低下し始めた、という内容である。
リーマンショック後の5年余り(2013年まで)を振り返ると、先進国の中で米国は経済安定化をいち早く実現し、株式市場でも米国株のパフォーマンスは総じて他国を上回っていた。ただ、米国でも景気の落ち込みが大きく、労働市場の劣悪化で、若年世代が親と同居する割合が大きく増える事態となっていた。上記のレポートでは、今後労働市場の改善が続き、両親と同居していた若年世代が独立するようになり、そうした行動が今後の米国の住宅需要を下支えするとの見通しが示されていた。
日本男子の草食化にも、デフレ不況が影響していた
米国だけではなくどこの国でも、不況の影響を最も受けるのは就労経験やスキルが相対的に足りない若年層である。先のデータは、不況が深刻になると米国でも、日本でかつて話題となった「若者のパラサイト化」が起きるということだろう。
かつて日本で、山田昌弘氏(現中央大学文学部教授)によって「パラサイト・シングルの時代」が発売されブームになったのは1990年代後半だった。
山田氏が掲げたパラサイト・シングルは、経済的に余裕がある若者が、両親と同居することで生活水準を高める利己的な行動がフォーカスされ、そうした新しい家族の在り方が社会現象として注目された。ただ、若者のパラサイト化が広がっていたこの時期、1990年代後半から、日本ではデフレ不況が深刻化していた。新卒を中心に労働市場の環境が厳しくなり、親との同居を経済的な理由によって、やむを得なく選択した若年世代が増えていたことが影響していた可能性がある。
「パラサイト」に続いて、2000年代後半からは若者の「草食化」というフレーズが流行った。女性の肉食化に対して男性が草食化したとう観点から、「若者の草食化」という現象が語られることが多いが、草食化はパラサイト化と同様に、経済的な要因が影響していると筆者は考えている。
就職氷河期が長引く中で、日本経済はデフレと経済停滞が恒常化していた。こうした厳しい経済情勢に対応し、若者が広範囲にリスク回避的な行動を合理的に選択していたことが、中高年世代からみると「草食化」しているように見えたということである。
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