一流の登山家は「日本一低い山」からも学ぶ 地球上の8000m峰を全て制した男の人生哲学

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ある日、竹内氏は大阪にある天保山を訪れたという。それは、標高わずか4.53m。8000m峰を登り続けた男が、日本で一番低い山に好奇心をかき立てられたのだ。

この地球上に存在する最も高い山の頂を知る者が、なぜ低い山に魅了されるのだろうか。

「天保山は、登山口から頂上へ下ってゆくという画期的な山。そんな山は他にありません。高さも山の魅力の一要素ですが、それが全てではありません。山には、それぞれの魅力と個性がある。私はその魅力と個性に惹きつけられて登山を続けてきました。同じ山なんて2つとないのです」

営業をしていれば、時に数字を追いかける日々をルーティンに感じることもある。プロジェクトの規模や受注金額で仕事にランク付けをして、スケールの小さい仕事に意欲を削がれてしまうこともあるかもしれない。だが、同じ山がないように、同じ仕事もまた2つとしてないのだ。

「アタック」から「サミットプッシュ」へ

「営業なら相手は人間ですから、毎回必ず違うところがあるはず。その仕事ならではの個性と魅力を見出して、自分の好奇心をかき立てることが、意識の高まりにつながるのではないかと思います」

登山用語で、山頂を目指すことをかつて「アタック」と呼んだ。しかし、今は「サミットプッシュ」が一般的な呼称に変わったそうだ。

「攻撃するのではなく、頂上に向けて自らを押し上げていく。この感覚はとても大事です。攻略だけを目的としても、その先はありません。目標は与えられるものではなく、自ら見つけるもの。自ら目標を打ち立て、そのために足りないものを補いながら、自分を頂まで押し上げていく。そうすることで、その過程の中でまた新しい目標を見つけることができるのです。終わりなんてありません」

日本人初の偉業を成し遂げてなお、竹内氏の情熱は衰えを知らない。なぜなら、彼はプロ登山家になると宣言したときに、一生登り続けていくことを決めたから。その揺るぎなき覚悟は、営業という厳しい山道を登る者たちにとっても、きっと通じるものがあるはずだ。

取材・文/横川良明 

撮影/柴田ひろあき(撮影協力/ICI石井スポーツ 原宿店)

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『20's type』編集部

『20's type』は、キャリアデザインセンターが運営するWebマガジン。2018年4月より『営業type』からサイト名をリニューアル。新時代を生きる20代若手ビジネスパーソンの「働く力」を育むために役立つ情報を発信している。

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