味の素ギョーザをヒットさせた「主婦の発想」 ビッグデータでは見えない重大な気づき

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中食商材の代表格でもある家庭用冷凍食品の市場規模は、7300億円に上ります。その中ですべての冷凍食品の単品売上額で2003~2011年まで9年連続でトップの座を守っていたのが、味の素の『ギョーザ』です。一度は食べたことがあるのではないでしょうか。

同商品は冷凍餃子のカテゴリーシェアで約55%を占める、ガリバーブランドです。味の素が冷凍餃子を発売したのは1972年。1997年にはフライパン調理で油のいらない『ギョーザ』を発売し大ヒットを記録するなど、カテゴリーリーダーでありながら絶えず新しいコンセプトを打ち出しています。

年商100億円を超えるお化け商品に

2012年に同商品をリニューアルした「ギョーザ 油・水なしでさらにパリッと焼ける!!」は、同2012年10~12月期の出荷額が前年同期の155%に達する人気となり、現在では単体商品で年商100億円を超えるという、冷凍食品分野のお化け商品になっています。

味の素は商品リニューアルにあたり、冷凍餃子のメインユーザーである主婦を対象に行動観察を実施しています。家庭で毎日使っているフライパンを持ってきてもらい、主婦たちに普段と同じように冷凍餃子を作っているシーンの調査を行ったのです。

同社によれば、行動観察の調査結果の中から特に着目したのは、目分量で入れている水の量。ギョーザは本来、適切な量の水をきちんと入れないとおいしく作れません。水の量が多すぎるとベチャベチャになりますし、量が少なすぎると焦げついてしまいます。ですので、本商品もパッケージに水の量が明記されていました。

ところが観察シーンでは、主婦たちはパッケージの表示を無視し目分量で水を入れていたそうです。料理の手間をあまりかけたくないために冷凍食品を利用していることを考えれば、目分量で手軽に作りたいというのが本音であるのは当然であります。また、味の素の『ギョーザ』はあまりに身近な商品になりすぎて、主婦たちからすれば作り方をわざわざ見るような商品ではなくなっていたのです。

行動観察という手法は定量調査だけでは気づかない、こうした細かな動作の中から「当たり前の仕草」を見つけるには大変有効な手段だったわけです。

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