味の素ギョーザをヒットさせた「主婦の発想」 ビッグデータでは見えない重大な気づき

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同社の商品開発秘話には興味深い考察があります。「ギョーザ 油・水なしでさらにパリッと焼ける!!」に関連する特許を、この商品の発売より数年前の2006年に出願していることです。

特許というビッグデータを行動観察によって絞り込む

特許データは公開されており、その要約は以下の通りで、内容は本商品のコンセプトそのものです。

【出願番号】特願2006-116998(P2006-116998)
【出願日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【課題】フライパン調理時に油および水を加えることなく、また、ふたをかぶせたり、とったりする煩雑な作業をいっさい必要せずに、良好な見栄えと食感を有する冷凍餃子に関する。
【解決手段】(1)餃子、(2)バッターよりなる第一層、及び(3)水又は調味液よりなる第二層を、それぞれ100:5~30:20~100の割合で接触させ、その後冷凍して得られる冷凍餃子、および、(1)トレー、当該トレーに配置された(2)餃子、(3)バッターよりなる第一層、及び(4)水又は調味液よりなる第二層をそれぞれ接触させ、その後冷凍して得られるトレー入り冷凍餃子であって、当該餃子、当該第一層、当該第二層の比率が100:5~30:20~100の割合であるもの。

 

ここからは推察になるのですが、おそらく同社では調査をする前から、膨大な特許データを取得していたものの、具体的な商品開発には結びつけられていなかった。しかし、目分量でギョーザに水を入れる主婦の行動を発見し、技術と消費者ニーズが結びついた、画期的な商品につながったのではないでしょうか。

蓄積していた特許技術を、行動観察によって有用な情報まで絞り込むことができた事例ではないでしょうか。

イノベーションの世界で脚光を浴びる、デザイン・ファームIDEOのCEOトム・ケリー氏という人物がいます。彼はイノベーションの技法として、まず「観察」から始めることを提唱しています。ビッグデータの時代において、消費者を観察するという、ある種基本に立ち返った行動の有用性は一層高まっていくと思います。

もちろん、行動観察が万能というわけではありません。ときには大きな結果が導き出せないことも当然あります。また、ただ行動を観察するだけでは重要な示唆を得ることもできません。行動観察から重要な示唆を得るためには、行動に注目する前に「誰の」に注目する必要があります。

次回は「誰の」行動観察を行うのがよいかについて考察し、漠然と信じられていた常識を覆し、大ヒットにたどり着くためのヒントをくれる「エクストリームユーザー」についてご紹介したいと思います。

高橋 広嗣 フィンチジャパン代表取締役

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たかはし ひろつぐ

早稲田大学大学院修了後、野村総合研究所経営コンサルティング部入社。経営戦略・事業戦略立案に関するコンサルタントとして活躍。

2006年「もうひとつの、商品開発チーム」というスローガンを掲げて、国内では数少ない事業・商品開発に特化したコンサルティング会社設立に参画。食品、飲料、通信キャリア、化粧品、製薬メーカー等の事業・商品開発支援を行っている

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