“お家騒動”克服「あきんどスシロー」に学ぶ再生術 値下げ路線を修正、ブランド価値を再構築
ファンド資本が入ったことによる、華麗なる業績の復活。一見絵に描いたようなストーリーだが、内実は異なる。「ユニゾンが筆頭株主になったとき、社内の不安は大きかった。ユニゾンに対する社員の印象は必ずしもよくなかった」と豊崎自身が語るように、現在の好業績は内紛を繰り広げた4年半前には想像できないことだった。現に08年度決算は営業利益が大幅下落。MBOに伴うのれん償却を加味しても、ユニゾンの傘下に入った直後に業績が落ち込んだことは明らかだった。
最大の失敗は、低価格戦略に突き進んだことにある。09年2月から8月まで「一皿90円」キャンペーンを毎月1回、平日5日間全店で実施した。この間既存店売上高は上向き、単月ベースでは初めて「かっぱ寿司」を追い抜いたが、出店加速による混乱も重なり、結果的に利益にはマイナスになってしまっていた。
ユニゾン出身で08年12月にあきんどスシローへ完全移籍した、専務執行役員の加藤智治は「値下げは劇薬だった」と戦略ミスを認める。値下げはブランド認知度を上げるが、それで来たお客さんは、終わるとすぐ離れる。「突然の客数増で店舗オペレーションが乱れ、ブランドの価値を毀損してしまった」(加藤)。
「スシロー」を含め大手回転ずしチェーン3社は、もともと一皿100円均一で商品を提供しており、外食業界における低価格業態の代名詞でもある。「スシロー」が値下げを仕掛けた09年初頭は、リーマンショックによりデフレが深刻化。この頃、居酒屋や牛丼チェーンでも熾烈な値下げ競争が勃発しており、厳しい外部環境に対抗するため「スシロー」が打ち出した「一皿90円」は時宜を得た有効策のはずだった。現に「かっぱ寿司」と「くら寿司」は「一皿90円」が利益増に結び付いていた。
この差は何か。豊崎と加藤の考えはここで一致する。「値下げは品質にこだわりを持つ自分たちの強みと相いれない。遠回りでも『スシロー』のブランド価値を掘り起こし、世の中に伝えていくことが重要だ」
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