“お家騒動”克服「あきんどスシロー」に学ぶ再生術 値下げ路線を修正、ブランド価値を再構築
すしの“原点”と進化を社内外にアピール
「スシロー」の強みは、50%に上る高い原価率にある。外食業界の原価率は平均30%強、回転ずしは平均40%強であることを考えると、群を抜く水準だ。しかも、食材を集中加工するセントラルキッチンを持たず、魚の切り出しをできるかぎり店舗で行っている。
セントラルキッチンには調理コストを減らせるメリットがあるが、店内調理と比べ魚の解凍回数が増えるため、うま味が落ちるデメリットがある。同社もセントラルキッチンを一度設置したものの、「ネタのよさで勝負するべき」という理由で04年2月に廃止した。立ちずしをルーツに持つプライドからの判断だった。
この強みに着目したのが、ユニゾン出身の役員を中心に外部スタッフも多数参加する「チームスシロー」だ。中でも博報堂クリエイティブディレクターの市耒(いちき)健太郎は、「スシロー」の強みを引き出すという点で、大きな役割を果たす。市耒は09年春に初めて店舗を訪問。豊崎やほぼ全店の店長へのヒアリングも複数回行い、「ものすごく面白い物語がある。化けるものがあると感じた」という。
市耒の感じた物語はこうだ。すしは江戸時代に築地の屋台で出されたカジュアルなファストフードが原点。今でこそ敷居が高いイメージもあるが、それは築地の隣が銀座だったからだ。「全店舗に教育されたすし職人がいて、うまい本マグロ2貫を赤字スレスレの一皿100円で食べられる。すしの歴史の原点を、進化させられる魅力があった」。
その原点と魅力を言語化したキャッチコピーが「うまいすしを、腹一杯。」である。最初聞いた豊崎は「いいやん、それで行こう」。09年11月には全国紙一面に「うまいすしを、腹一杯。」の広告を掲載、テレビCMも積極出稿し、スシローの強みをアピールした。キャッチコピーはほかにも「スシローの赤身はほぼ赤字です。」や「職人品質。」(原点の「鯛すし」は味の鯛すしと呼ばれるほど有名だったことなど説明)など、スシローの持つ強みを次々に表現。マス広告だけでなく、店内ポスターとしてキャッチコピーを張り出すことで浸透を図った。
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