念願の完全民営化へ、JTが最後の詰めに必死
政府・民主党が東日本大震災の復興財源の一部(2兆円分)として、日本たばこ産業(JT)株を完全売却することを決めた。自由な経営を求めるJTにとって設立以来の念願であり、志水雅一副社長は「基本的な方向として(JTの)希望と同じだ」と歓迎の意を示した。
だが、実現にはJT法改正が必要で与野党合意のハードルは残る。自民党が手厚く保護してきた業界関係者から反対の声が根強いためだ。
小売店の組合は、「今後定価制などの保護策にメスが入るときつい」と反発。葉タバコ農家も、「現在は外国産の3~4倍の価格で全量引き取ってもらっている。これが崩れれば価格破壊につながる」と懸念を示す。
全国たばこ販売協同組合連合会の稲毛義人副会長は、「今回は業界団体へのヒアリング前に方針が決まる異例のプロセス。最終決定を控えロビー活動をしたいが、正直、民主党は誰がシンパか、わからない」とお手上げだ。
廃作協力金増やすJT
自民、公明党はこうした声に配慮して法改正に慎重姿勢だ。だが、JTは何度も立ち消えになった完全民営化の好機と見て根回しに必死で、「全株放出後も農家からの全量買い取りのシステムは残していい」(志水JT副社長)と農家保護の姿勢を見せる。
その裏でJTは農家減らしの布石を打っている。今年8月に7年ぶりとなる廃作を葉タバコ農家に募った。前回は10アール当たり20万円の協力金を設定したが、今回は同じ面積でも28万円に大幅増額した。農家は、「JTは本気でうちらをやめさせようとしている」と戦々恐々だ。
JTには一時的な損失が発生しても取り戻せるとの思惑がある。実際、関係者は、「全量買い取り義務がなくなれば、350億円以上の増益効果になる」と算段する。