子ども服で"炎上"「男性下げ」が禁句となった背景 かつては「おっさんの発想だ」なども許されたが…

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権力のある男性が「女性は○○だ」と言えば「決めつけだ」「女性蔑視だ」と大きく批判される(実際、森喜朗氏はそうした発言によって東京オリンピック・パラリンピック大会組織委員会の会長職を辞任した)。

一方で、女性の論客が「男性は○○だ」と言っても、さほど激しく批判はされない。

そうした“非対称性”が黙認されているのは、「男性のほうが女性よりも強い」という社会的通念があるからだ。

しかし、現在は“強者”と“弱者”の境界は曖昧になってきている。上司は部下に、教師は生徒に、大人は子どもに、夫は妻に対して、気を遣うことが求められている。もちろん、まだ上下関係は残っており、完全に平等になったとは言い難いのだが、関係性は変化しているし、多様化もしている。

タレントのフィフィさんは、都知事選の直後に下記のようにXに投稿し、多くの共感の声を集めていた。

「叩かれたら #女性蔑視 のバッシングだなんてすり替えないで下さい。日頃の言動を真摯に受け止めて反省することもできないから支持されないんです。批判して追い込まれたら女性を盾に被害者ぶる、同じ女性としてハッキリ言います、迷惑です。女性は“弱い”と見下して利用してるのはむしろこうした人達」

フィフィさんの発言の是非はさておいて、「女性は弱い」という社会的通念は薄らいでいることは確かだろう。

バースデイ
商品に関する投稿は現在すべて削除されている(出所:「バースデイX@しまむらグループ」公式Xより)

“強者を落とす”表現に注意

話題を戻すと、バースデイの商品に記された「パパはいつも帰り遅い」「パパはいつも寝てる」という言葉は、すでに現実からずれていたように思う。

女性も働くことが通常になっている現代では、妻のほうが帰宅が遅い家庭も少なくない。子どもの送り迎えをはじめ、子育てを分担している家庭も多い。

筆者の知人には「夫はほぼ在宅勤務で、妻は出勤」という共働き世帯が何名もいる。コロナ以降は、「パパはいつも帰り遅い」どころか、ずっと自宅にいる父親も少なからずいるのだ。

だから「いつも寝てる」という状況が、母親より父親のほうに当てはまるとは限らない。

そうした意図はないのかもしれないが、母親側が専業主婦であることを前提とした物言いのようにも受け止められる。そうした点では、多くの女性から共感を得られる商品でもなかったように見受けられる。

男性を落とす表現が炎上したケースは少ないと書いたが、いまの世の中には、男女に限らず、もとは“強者”とされていたが、そうではなくなった人を落とそうとする発言は少なくない。いずれ、問題になるケースは他にも出てくるだろう。今回のケースを「他人事」と思わないほうがいい。

西山 守 マーケティングコンサルタント、桜美林大学ビジネスマネジメント学群准教授

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にしやま まもる / Mamoru Nishiyama

1971年、鳥取県生まれ。大手広告会社に19年勤務。その後、マーケティングコンサルタントとして独立。2021年4月より桜美林大学ビジネスマネジメント学群准教授に就任。「東洋経済オンラインアワード2023」ニューウェーブ賞受賞。テレビ出演、メディア取材多数。著書に単著『話題を生み出す「しくみ」のつくり方』(宣伝会議)、共著『炎上に負けないクチコミ活用マーケティング』(彩流社)などがある。

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