インド人社員対策、まずは紛争予防とバランスが必要--山本匡弁護士インタビュー
日本企業のインド進出が増加するにつれて、法的課題への解決ニーズも急増し、弁護士への要求も複雑化、高度化してきている。そこで今回は、インドを専門分野の1つとして活躍する、数少ない日本人弁護士の1人である長島・大野・常松法律事務所の山本匡弁護士に「インドに進出する日本企業のための人事労務上の注意点、法律上の課題」などについてインタビューした。
(聞き手は、南アジアの企業・金融・経済情報の提供のほか、進出支援コンサルティングなどを行っているネクストマーケット・リサーチの須貝信一代表)
--今日はよろしくお願いします。山本さんは大手法律事務所アマルチャンドなどに赴任していらしたんですよね。
はい。ムンバイとバンガロールに赴任し、この6月末に帰ってきました。
--では早速ですが、今日は日本企業のための人事労務上の注意点をお聞きしたいと思いますが、まず日本と比較して「インド労働法」の特徴は何でしょうか?
よくいわれることとして、労働者が非常に手厚く保護されていると思います。日本も労働者の保護に厚い国の1つだと思いますが、インドは日本を超えていると思います。それ以外では、「法律の多さと細かさ」だと思います。連邦法だけで60以上、加えて州法もありますし・・・。
法律の内容も、非常に細かいことまで定めてあるな、と感じることがあります。例えば、床の清掃であったり、飲料水であったり、日本的な感覚からは、本当に細かい事まで法律に定められていることがあります。
--確かにそうですね。『立ち仕事にはイスを用意しろ』とか、当たり前のことが条文化されていたり・・・。法律というより、就業規則レベル以下の話ですね。細かくするなら、もっと的確にできるのではないかと思います。
あとは、「撤退の難しさ」ですね。世銀が世界各国の『Doing Business 2011』という資料を公表していますが、このインド版では、インドはアジアの中でも撤退に労力を要する国のようです。詳しい要因はこの資料に記載されていませんが、一定の場合には事業所を閉鎖するのに政府の承認が必要となるなど、労働者の保護に厚いという点も、撤退を困難にする1つの要因なのかなと想像しています。