インド人社員対策、まずは紛争予防とバランスが必要--山本匡弁護士インタビュー
--では、採用、雇用契約での注意すべき点は何ですか?
書面で雇用契約を締結すること、契約中で雇用者と従業員の権利義務を明確にすることは当然必要です。雇用契約のポイントは多数ありますが、中でも、試用期間を設けることと、実際に雇用する場合、雇用期間を定めることが重要だと思います。
試用期間を設けるのは、この期間内であれば理由なく採用しないことが可能だからです。通常、試用期間は6カ月程度です。インドでは雇用期間の満了による雇用の終了は原則的に解雇にならないため、期間を決めておけば訴えられるリスクを低くすることができます。
--なるほど。それ以外に実際に現場で問題となっている問題は何かありますか?
さまざまありますが、重要なものの1つとして内部情報の管理があると思います。インドのジョブホッピングは有名ですが、その際に問題となるのが「情報の漏洩」です。もちろん、雇用契約に労働者の守秘義務を定めます。が、守秘義務を定めても、現実に情報は漏れてしまうとどうしようもないわけです。持ち出した情報を転職のアピールポイントにしようとする人さえいます。
--起こりうる話ですね、いわゆる個人情報保護法のようなものはないのでしょうか?
日本の個人情報保護法のような法律はないと思います。情報に価値があることは分かっていると思いますが、「情報はカネ」という意識がインド人は低いのかもしれません。稟議書なんかを持ち出されると大変なことになります。
--なるほど。では持ち逃げした場合、犯罪にはなるのでしょうか?
犯罪になる可能性はあります。また、雇用契約に守秘義務があれば、少なくとも契約違反とはなるでしょう。情報は漏洩すると取り返しがつきませんから、契約上の手当てもさることながら、実際の手当ても重要です。