Z世代を対象に「不安ビジネス」が蔓延する理由 財務に優れた日本企業は経営でも舵を切れるか
今の就活ビジネスはすさまじく、こんな場面を目の当たりにしたことがある。1年生向け授業で「就活ガイダンス」が行われた。就活仲介サービスの企業から人が派遣されてきて、就活のアレコレについてレクチャーするのである。現代の大学では珍しくない光景だ。
とある企業の方が登壇し、授業も終わりかけた頃。その方は待ち構えたように、終わりの言葉を言ってのけた。
「皆さん就活は、今のうちから、1年生から始めましょうね。隣の友達が内定を持っているのに、自分が持っていなかったら嫌ですよね」
衝撃を受けた。思わず口が滑ったというより、台本を読み上げるような言い方だった。つまり誰かに指示されて、意図的に発信したのだろう。
このエピソードからわかることは2つ。まず、(一部の)企業は学生を脅して、不安を煽ってビジネスチャンスを得ることに躊躇がない。そして、学生は友達に弱い。よく調べている。名のある大企業だけあって、市場調査もきっちりやっているのだ。
こうした不安を煽る形で消費を促すビジネスを「不安ビジネス」と呼称しよう。Z世代は消費の主役とされているが、ふつうお金を持っていない。それでもお金を使ってもらうために不安を煽る。ぶっちゃけ、倫理的な面を見なければ、よくできたビジネスである。
鋭利な営利の論理
しかし、就活サービスをはじめとする不安ビジネスでは、なぜこんなにも営利の論理がむき出しなのだろうか。つまり、なぜ営利行為であることを隠さないのだろう。東京大学の清水剛教授は、次のような考察を展開する。
古典的な不安ビジネスに悪徳宗教がある。「あなたには霊が取り憑いてる」などと言って不安を煽るわけだ。そして、「浄化」や「救済」のためには、特別な儀式や祈祷、物品を購入する必要があるとして、献金を求める。この古典的な不安ビジネスでは、一応は宗教というていを装って、不安を煽る。恐らくは、「不安を煽るのは悪いことだ」という意識が、根本にはあるからだろう。
しかし、就活サービスのような不安ビジネスでは、営利の論理が隠されていない。年端もいかない大学生の不安を煽ることに躊躇がない。なぜこんなにも倫理性を欠いたビジネスが横行するのだろうか。
1つの結論として、清水氏が指摘するのは、不安ビジネスは「ローリスク・ローコスト」なビジネスだということだ。どういうことか。
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