ヴィレヴァン300店巡って見えた「品揃えの失敗」 「遊べる本屋が魅力」を失った本質的な要因
「そんなことはありません。創業者の菊地さんの存在が強く、『趣味の店』のように思われていますが、ヴィレヴァンはそもそも利益追求集団なんです。そこには巧みな販売手法があって、それで店はうまく回っていました」(ヴィレ全さん)
前回のインタビューでも紹介したように、ヴィレヴァンでは、本を入り口にして、それに関係する商品などを購入させることで利益率を確保する、いわゆる「粗利ミックス」のやり方で利益を上げていた。
誤解がないように言うが、筆者は利益追求を批判しているわけではない。書籍のように利益率の低い商品を扱うには、むしろ適正な利益追求は必要だろう。
だが、利益追求が、働く人に負担をかけることもあったようだ。
「今ではそんなことはありえないのですが、聞いた話だと、かつてイオンモールの店舗だと、イオンモールの中なのに、22〜23時を過ぎても働いていたり、ひどい場合だと朝まで仕事をしている店長が床に寝て、開店まで仮眠して……、なんてこともあったようです」(ヴィレ全さん)
いわゆる「モーレツ」な働き方をしていたのだ。一般に持たれる「サブカル系で、良い意味で浮世離れしている」ヴィレヴァンのイメージとは、少し異なっている。
増えすぎた店舗が「ヴィレヴァンらしさ」を失わせた?
こうした利益追求の延長線上に、一時期の強気の出店姿勢があったと、ヴィレ全さんは見ている。
「どんな田舎でも、そこにイオンモールがあれば、以前のヴィレヴァンは出店していました。
お店が増えすぎて、特別感が薄れてしまったのは事実だと思います。2000年代で100店舗ほどだったのが、その後急激に増えて400店舗になり、今ではそれが100店舗ほど潰れて300店舗程度になっています」(ヴィレ全さん)
こうした急激な店舗拡大は、ヴィレヴァンの持っていた「サブカルの空間」としての特権性を失わせてしまったのではないか。筆者は過去の記事で「ヴィレヴァンが知らぬ間にマズいことになってた 『遊べる本屋』はなぜ魅力を失ってしまったのか」でそう指摘しているが、この点についてはヴィレ全さんは異なる見解を持っているという。
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