「日本一アイスを食べない」あの街が示す盲点 圧倒的に暑い常夏リゾート地がなぜ?
続いて、アイスショップ。沖縄といえば有名な「ブルーシールアイス」がある。1948年に米軍基地内にできたアイスクリームショップだ。沖縄の名産を使ったアイスの種類は、なんと30種類以上。取材当日も、沖縄っ子達が次々とアイスを買っていた。店内を張り込んでいると、一心不乱にアイスをかごに入れているおじさんを発見。高校球児への差し入れのため、なんと90個を買い求めていた。
さらに沖縄では、「アイスクリン」という路上のアイスクリーム屋さんが目立つ。目印は青いパラソル。かわいい女子高生たちがアルバイトで働いている。これは40年前から沖縄っ子に親しまれているという「路上アイス」。多いときで沖縄県内に約30カ所も展開されることがあり、週末の営業で1日100個近く売り上げるそうだ。
沖縄で食べられるのは、アイスではなく「ぜんざい」?
一方、詳しく調べていくと、沖縄でアイスが売れていないことに関係するヒントにたどり着いた。それは「ぜんざい(善哉)」だ。沖縄の人は口をそろえて「ぜんざいを食べる」と言う。
ぜんざいとは「汁粉(しるこ)の一種。関東では餅に濃いあんをかけたもの、関西ではつぶしあんでつくった汁粉をいう」(大辞林)。ただ、沖縄のぜんざいは、とても冷たい食べ物だという。そして沖縄にはぜんざい屋がたくさんある。そのうちのひとつに行ってみた。すると、沖縄のぜんざいとは、かき氷だということがわかった。
沖縄のぜんざいで使うのは金時豆。もともとは本州と同じように、温かいモノとして食べられていた。しかし、冷蔵庫の普及が進むとともに冷たいスイーツとして沖縄独自の進化を遂げ、いつしかかき氷に姿を変えた。
沖縄のぜんざいで有名な「新垣ぜんざい屋」は、冷たいぜんざいを求めて、店内はいつも満席。注文は券売機でするのだが、そのボタンを見てみると「1名様用」のボタンからひとりきざみで、たくさんのボタンが並び、なんと「20名様用のボタン」があった。このボタンは、ちゃんと押されたことがあるのだそうだ。
ある女子高生は、暑いときにぜんざい屋をはしごするのだそうだ。外で食べるだけではない。自宅に届けてくれるデリバリーもある。ある小学校では公式行事が行われる中、なにやら大量の発泡スチロールが教室に運び込まれたのだが、中身を見るとかき氷だった。
なぜ、沖縄の人たちはこんなにも「かき氷」をたくさん食べるのだろうか。天気とビジネスの関係を研究する専門家に話を聞いてみた。すると、気温が30℃を超えるような暑さの日には、アイスクリームよりもかき氷のほうが売れる現象が起きるそうだ。
そこそこの暑さならアイスを、とてつもなく暑いときはカキ氷を食べたくなるのが人間の性らしい。沖縄は、とてつもなく暑いかき氷日和のほうが多い。これが、沖縄でアイスの消費金額が少ない最大の理由だと考えられるのだ。多くの人が持っているイメージと実態は、必ずしも同じではない。沖縄のアイス事情が教えてくれた盲点である。
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