松井:セブン&アイHDの強みのひとつは、「クロワッサン・ドーナッツ」のエピソードに象徴される「徹底する力」です。全国の約1.7万店舗の商品棚から、鈴木会長の号令ひとつで、商品をアッという間に撤去できる、その実行力はすごいの一言です。
遠藤:確かに、企業にとって徹底力は強力な武器ですよね。でも、松井さんも、社風を変えるために「朝の挨拶当番」を導入し、それを徹底するために松井さん自身も挨拶当番に参加するなど、トップとして「徹底する力」を発揮されてきましたね。
松井:ええ、うちも「徹底する力」を根付かせるように、あの手この手の仕組みを作っています。「朝の挨拶」にしても、トップが本気で取り組んでいることを社員たちに見せないと、長年、しみ込んだ社風なんて簡単には変えられませんから。
遠藤:企業トップが率先して実践する「徹底する力」は、その使い道こそ違うものの、セブン&アイHDにも無印良品にも共通している点ですね。
共通点2 マニュアルを進化させる力
松井:セブン&アイHDに見習うべき「2つ目の力」は、うちも取り組んでいますが、「マニュアルを進化させる力」です。
遠藤:前回も詳しく伺いましたが、良品計画でも、店舗で働く人たちがいろいろ改善提案を出し、業務マニュアルを毎月更新していますよね。
松井:そうですね。一方のセブン&アイHDは、エリア別に複数店舗を統括する責任者と、店長たちが集まって開かれる営業会議で、改善点などを議論しているようです。
遠藤:つまり、良品計画は社員やスタッフ中心の改善提案方式であるのに対し、セブン&アイHDは統括責任者と店長による会議方式と、「改善の方法」に違いがあるということですか?
松井:そう思います。加えて、セブン&アイHDは統括責任者も、会議のテーマを念頭に担当店舗を回り、彼らなりに調べることで、マニュアルの改善に一役買っているようです。ほかのコンビニは、各店長任せの割合が大きい分、結果としてセブン&アイHDの徹底度合いが際立っている状況で、それが業界シェア41.3%(2015年2月期)につながる「強さの秘訣」だと私は思っています。
遠藤:なるほど。「マニュアルを進化させる力」という点でセブン&アイHDと無印良品は共通しますが、店長級会議と社員提案という形式に違いがあるわけですね。最後の「3つ目の力」というのは?
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