「アニメ頼りの日本映画」がアジアで直面した現実 アジア最大規模のジャンル映画祭で見えた課題
また、今年の本映画祭のマスタークラス講演には、“コメディ映画の巨匠”として三谷幸喜監督が招待された。会場となった韓国漫画博物館メインホールは、若い世代のファンでほぼ満席。三谷監督のジョークが冴えるエンターテイナーぶりに、会場中が熱気に包まれた。
三谷監督が講演で海外の映画祭に行くことはこれまであまりなかったが、今回はアジア最大のジャンル映画祭ということで、本人が興味を持ったという。
最新作『スオミの話をしよう』のプロデューサーである、フジテレビの玉井宏昌氏は「三谷さんのような時代を超える日本映画の名作を撮ってきた映画監督を、世界中の人にもっともっと知ってもらいたい。こういう場での海外の観客とのコミュニケーションには大きな意味があります。クリエイターとしての三谷さんと、新作を含めて三谷作品群を知ってもらう貴重な機会になりました」と手応えを語る。
国際共同製作および資金調達に向けた企画ピッチングプログラムでも、日本映画界の存在感が感じられた。
VIPOは例年、本映画祭の企画マーケット「NAFF It Project」に参加し、世界から招待された出資者、映画祭プログラマー、プラットフォーマー、配給会社、プロデューサーなどによる企画ピッチングに日本から参加者を送り出して、サポートを行っている。
大手映画会社が企画ピッチングに参加
今年は17カ国23組のピッチングが行われ、そのうち日本からは3組が参加。3日間のピッチングと個別ミーティングを経て、最終日に各賞が表彰された。
日本からは、東映の髙橋直也プロデューサーと吉田大八監督による企画『BAIT』がTAICCAアワード、独立系の藤田可南子プロデューサーと村上リ子監督による企画『Push-button Syndrome』がアジアン・ディスカバリー・アワードを受賞する快挙を果たした。
本プログラムは、ほとんどが脚本完成前の企画や、プロット段階でのピッチングだ。東映のような大手映画会社が、作品の買付けや権利の売買ではなく、企画ピッチングに参加するのは極めてまれなことだ。
今年から本格的に国際共同製作に向けて動き出した東映にとっては、初めての挑戦。ピッチング3日間のうちの2日間は、東映のプロジェクトに参画する吉田監督も出席し、髙橋プロデューサーとともに登壇して、スピーチを行った。
そんな東映の『BAIT』が受賞したのは、台湾のコンテンツ産業のグローバル展開を促進する独立行政法人TAICCAが提供する賞だ。1万ドルの賞金のほか、この先の国際共同製作に向けてこれから話を進めていく予定だという。
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