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安易に「共生社会」語る人に伝えたい"危うい盲点" 一方だけが得をする「寄生」になっていないか

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  • 井手 英策 慶應義塾大学経済学部教授
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ルソーの言葉をもう一度思いだそう。何がこの社会を生きる人びとの「共通の利益」なのかを考えてみるのだ。

大企業に税を課すとしよう。税収を、例えば、義務教育の質的向上や職業訓練、職業教育の充実のために使ってはどうか。

そうすれば、貧しい家庭の子どもたちや、職をなくした人たちへの直接的支援となるだけでなく、労働者の質の改善は企業のメリットにもなる。これらはいずれも「経済的な豊かさ」という私たちに共通の利益をもたらす。

高所得層に税を課すとしよう。その税収を、例えば、福祉従事者の処遇改善、福祉専門職の養成に使うとする。

そうすれば、福祉の現場で働く人たちの将来不安の解消につながり、かつ、高所得層も含めたみんなの安心な老後の強固な土台となる。これらは「豊かな老後」という共通の利益にほかならない。

相利共生社会は「痛みと喜びの分かちあい」で成り立つ

消費税という税がある。この税であれば、貧しい人も、外国人も含めて、みなで痛みを共有することができるし、どんな高所得層だって、ものを買えば、必ず課税される。所得税とはちがって、金持ちの節税の余地は、ほとんどない。

このような痛みと喜びの分かちあいが成り立って初めて、私たちは、「相利共生社会」を作ることができる。

一人ひとりが価値を認めあい、自立して生きていく領域と同時に、何が私たちの共通の利益で、そのために必要なお金を誰に、どの税で、どれくらい課すのかを話しあう連帯の領域を作る。そうすれば、自分の幸せと他者の幸せを調和できる社会が誕生する。

近代国家は国民統合をめざしてきた。わかりやすく言えば、社会をひとつにまとめ、秩序を作ることが国家の責任、ということだ。

気をつけたいのは、国民統合には、財政という巨大な共同事業に光を当て、<相利共生社会>を作っていくやりかたとは別に、もうひとつ、教育やイデオロギーを通じて、思想的に国民をまとめあげるやりかたがあることだ。

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【戦時期のドイツや日本からの教訓】

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