「いきなり!ステーキ」は店舗戦略も非常識だ 赤坂サカスに期間限定店を作ったワケ

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同チェーンの平均月商は1店当たり1500万円程度だが、赤坂店はその水準に達してないという。今回のTBSとのコラボ出店をきっかけに周辺での知名度を高め、8月末のイベント終了した後も赤坂店への集客につなげたいという思惑がペッパー側にある。売れている地区ではなく、売れていないエリアに限定商品を売りにした店舗を出すという“逆張り”の戦略だ。

高速出店はなぜ可能なのか

「いきなり!ステーキ」のシェフは焼くことに専念できる

2013年12月に銀座に1号店を出店して以降、店舗網を広げてきたいきなり!ステーキは、首都圏を中心に現在50店にまで拡大(7月17日時点)。将来的な店舗数の目標は特に定めていないというが、今年、来年とそれぞれ年間53出店を計画している。

「首都圏の場合はカニバリを避けるため、ある程度の出店基準を決めている。たとえば、私鉄沿線なら3駅に1店、JR山手線なら全駅に、新宿のようなターミナルであれば3~4店というようなイメージで出店している」(川野本部長)

こうした基準の下で昨年までは首都圏を中心に出店を加速してきたが、今年に入ってからは地方都市への進出も積極化している。すでに仙台、沖縄、熊本、広島へ出店を果たしており、今後は札幌への出店も予定している。

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「いきなり『S』ステーキ」の断面。適度な霜降りが乗っている

一般的に、大量出店には人材確保や店舗オペレーションの均一化という点で難しさが付きまとう。なぜここまでの高速出店が可能なのか。その理由が60~70歳のシェフの存在だ。

いきなり!ステーキの場合、調理で必要となるのは「焼く」ことに関する技術のみ。オードブルの調理など仕事が多岐にわたる通常のレストランでは働くことが難しくなった高齢のシェフでも、焼きに専念できれば実力を存分に発揮できる。毎日焼いていれば技術も熟練してくるので、店舗オペレーションも安定する。こうした職場を求めるシェフは国内に数多くおり、彼らを雇用することで出店ペースを維持できている。

今年は悲願だった海外進出も計画している。当初は、今夏にもニューヨークに進出する予定だったが、契約などの関係で遅延しているもよう。それでも「何とか今年中には進出したい」と川野本部長は話す。

米国といえばステーキの本場。一見、無謀とも思えるステーキ大国への殴り込みだが、勝算はあるとペッパー側は見ている。それは「日本スタイル」としてのステーキを米国で提供することだ。

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