ウクライナ侵攻を巡る最近のプーチン氏の発言で、やけに強気ぶりが目立つようになってきた。2024年6月14日に行った演説では、侵攻開始後初めて停戦に応じる条件を具体的に提示。ロシアが一方的に併合を宣言した東部・南部4州からのウクライナ軍の完全撤退や、北大西洋条約機構(NATO)への不加盟などを求めた。
この条件をキーウ側が受け入れることはありえず、それを承知のうえでの一方的な「降伏要求」とも言える内容だった。プーチン氏は2024年7月5日のオルバン・ハンガリー首相との共同会見でも、目指しているのはウクライナとの単なる「休戦ではなく、紛争の最終的な終結だ」とも述べ、ロシアが軍事的に圧倒的優位に立っているとの認識を内外に強調した。
しかし、軍事的にロシア軍が主導権を維持しているとは言え、強く抗戦を続けるウクライナを完全に追い込んだとはとても言えないのが現状だ。こうした表の向きの発言だけでは、その強気ぶりを説明できない、別の事情があると感じた筆者はその背景を探ってみた。
プーチン訪朝時の約束
その結果、その事情が判明した。冒頭に記した6月の演説の直後に行われたプーチン氏の訪朝で、北朝鮮の金正恩(キムジョンウン)朝鮮労働党総書記が秘密裏に、ロシアへの本格的軍事支援として、侵攻作戦への大規模な部隊派遣を約束したのだ。
両国間の交渉に詳しいロ朝関係筋によると、派兵は10万人規模にもなる見込みという。派遣部隊は戦闘部隊ではなく、工兵部隊だ。工兵とは通常、純粋な戦闘部隊ではなく、架橋工事や障害物撤去など戦場での補助的任務を行う部隊だ。
しかし、武器は携行するとみられており、状況次第で彼らが戦闘部隊に転じる可能性は大いにあると同筋は話す。ただ、具体的な派兵時期は本稿執筆時点では不明だ。
全部隊は、1回で投入するのではなく、何回かに分けて交代しながら派遣する可能性もあるようだ。派遣地域も具体的には不明だ。その辺りの実務的調整は、今後両国間で詰めの作業が行われるだろう。
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