新しい勝ちパターンはアナロジーで生まれる--『アナロジー思考』を書いた細谷功氏(クニエ マネージングディレクター)に聞く
戦略思考、仮説思考、フレームワーク思考、ラテラルシンキング……。すべての思考は、アナロジー(類推)から始まる。ベストセラー『地頭力を鍛える』の著者が「考える」ことの原点を読み解く。
──なぜアナロジー思考が重要なのですか。
ビジネスパーソンの間で何々シンキングが勉強されているが、それらは実は新しいものを生み出すわけではなくて、いかに論理の道筋をつけるかということ。その一方で、新しい発想はといえば、突然ひらめいたなどとなりがちで、論理から遠ざかってしまう。この論理と直感の間にあるものを科学する、つまり直感の再現が可能なように原理を追求していくと、両者をつなぐのが「借りて組み合わせる」というアナロジー思考であり、この思考が新しいものを生み出すのに欠かせない。
──今、それが日本企業で重要とも。
今まで日本企業の典型的な勝ちパターンは、欧米の先進的なものをまねして、それをいかに安く早く高品質で作るかだった。新興国の追い上げで、そのパターンではもはや難しい。かといって、ひらめきのある天才をいきなり期待できるかというと、そうはいかない。別の勝ちパターンに移っていかねばならない。
それには、今までの勝ちパターンをチューンナップして、まねプラスアルファを進化させることだ。その進化をさせるのにアナロジー思考が必要になる。ただしそれには表面的な類似ではなく、構造的な類似を用いなければならない。普通なら気がつかないような関係性によって、隠れた構造からまねをする。その類似は業界他社発ではなくて、まったく違う、遠い方向から持ってくることになる。そうすれば、元をただせば前からあったものなのだが、その業界では見た目に新しいものができる可能性がある。この続出で、日本の新しい勝ちパターンが生まれる。