新しい勝ちパターンはアナロジーで生まれる--『アナロジー思考』を書いた細谷功氏(クニエ マネージングディレクター)に聞く
──数学の難問「リーマン予想」の証明も、物理学者と数学者とのアナロジー思考だったとか。
理系の人にとっては、あの部分の記述がいちばん面白いのではないか。ビジネス本の中にコショウを利かせるために、そういうネタを入れたかった。
抽象化して、ものの関係性や構造を見抜くところが数学なり、物理の世界。私自身、最近、日々の生活はほとんど数学で学んだことでできているように思えている。表面的には数学そのものの問題を解くことはないが、その考え方は毎日のように使っているところがある。
それは学校で学んだときには、数学を習ってはいるのだが、それが抽象化思考、つまり一般化やモデル化としての習われ方をしていない。30歳ごろになってそれに気がついて、一生懸命やっている感じだ。ビジネスパーソンの皆さんも今同じように思っていて、こういう考え方は大切だと、やり直している方が多いのではないか。
──今、数学ブームといわれます。『地頭力を鍛える』でフェルミ推定を有名にして、先鞭をつけました。
仕事の中で日々やっていることとフェルミ推定がほとんど一緒だと思ったのが、あの本に書くきっかけになった。フェルミ推定はフェルミ推定、仕事は仕事で別のものと当たり前のように考えていたら、『地頭力』にまとめることはできなった。
一見違うものを同じだと見るのがアナロジーだ。その意味で同じものは世の中にいっぱいあって、それに気づいていないだけともいえる。新しい発想や技術がなかなか出てこないのは、ネタ同士をつなぐひもが見えていないだけで、そのひもを普段から見ようとしていれば見えてくる、あるいはひもは絶対あると仮定して見ると、何らかのつながりが出てくるものなのだ。