今回の『新宿野戦病院』は、先の説明文や、そもそもタイトルの近似性からして、『IWGP』への原点回帰になるのではないか。「21世紀のドラマがまた進化した」と思わせてほしいものである。
ドラマ界に「風穴が開いた」
さて、宮藤官九郎の前作『不適切にもほどがある!』と『虎に翼』に共通するのは「攻めてるなぁ」という感覚だ。
『不適切にもほどがある!』には、阿部サダヲ演じる「不適切」な「昭和のダメおやじ」が躍動する姿を、ぬけぬけとオンエアするという「攻め」を感じた(過度な炎上を回避する周到な配慮も同時に感じられたが)。
そして『虎に翼』は、時の与党や宰相が改憲を訴え続ける中で、日本国憲法(特に第14条)の価値を描き出し、またネット民が反応しがちな「フェミ」的内容やコリアンの生き様を毅然として打ち出している(吉田恵里香の脚本には果てしない「強度」を感じる)。
他、貧困層の代理母出産をテーマとしたNHK『燕は戻ってこない』や、現代のさまざまな問題をしれっと取り上げ、最後は国家賠償請求訴訟にまで展開したテレビ朝日『JKと六法全書』などを見て思ったのは、「おっ、ドラマ界が少し開き直ってきたぞ」という感覚である。
さらにいえば――「あっ、風穴が開いた」。
『不適切にもほどがある!』で特に印象に残ったのは、3月15日放送の第8回「1回しくじったらダメですか?」で描かれたキャンセルカルチャー批評だ。
番組を見た、たった数名の反応がコタツ記事によって広まり、実際には放送を見ていない人々による否定的コメントがSNSに氾濫した結果、スポンサーの不買運動につながっていく――。
テレビ局のリスクマネジメント部長・栗田(山本耕史)はこう言い放つ――「分かったでしょ、もはやテレビが向き合うべきは視聴者じゃない。見てない人なんです」。
このあたりは、作品についてSNSでさんざん、やいのやいの言われ続けたはずの宮藤官九郎はじめ制作スタッフの心根が反映されているのだろう。
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