しかし、過度な「コンプラ」への対抗心をそこかしこに投影した『不適切にもほどがある!』は大いに話題を呼んだ。そして、日本中に広がっていた、「不適切」を表面的に是認して拡散しがちなムードに風穴を開けた。
そして今、テレビ界が開き直って、風通しが少しずつ良くなりつつある――。
宮藤官九郎が「いちばんやりたかった作品」
さて、宮藤官九郎の最高傑作を聞かれたら、『IWGP』に加えて、昨年ディズニープラスで配信され、この4~6月にテレビ東京でも放送された『季節のない街』を挙げたいと思う(その意味では宮藤官九郎ドラマは「中3か月」ではなく「連投」だ)。
黒澤明映画『どですかでん』(1970年)の原作となった山本周五郎の小説を宮藤官九郎がアレンジ。(明らかに東日本大震災後を思わせる)「仮設住宅」を舞台に、めっぽう個性的な弱者たちがワチャワチャする物語。
そう、宮藤本人がディズニープラスの番組公式サイトで「どうしよう。今回は自信がある。紛れもなく、いちばんやりたかった作品で、これを世に出したら、自分の第二章が始まるような気がしています」と語った『季節のない街』は、「弱者の物語」だったのだ。
この表現が若干、宮藤官九郎の作風には不似合いだとするならば、「世間からはねつけられている弱い立場の連中は、バカや貧乏も多いけれど、実はめちゃくちゃ人間臭くて魅力的なんだ」という、山本周五郎から古典落語にまで通底するメッセージを描いたドラマ。
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