創業15年、「アイティメディア」が進む道

老舗ネット企業が利益を出し続ける理由

広告主が大手ITベンダー中心のテックターゲットと異なり、中堅・中小ベンダーが多いことや、両サイトの会員の重複が2割弱にとどまる相性の良さもあったが、アイティメディアがキーマンズにこだわったのは、広告主のニーズの変化が大きい。2000年代後半以降、営業や人事、総務、財務などの事業部門にもITが浸透したことで、広告主はシステム部門だけでなく、実務部門のユーザーに広告を打つ必要が出てきたのだ。カタログのように簡便に製品がチェックできるため、実務部門の会員が多く、しかも製品の購買に直結するキーマンズはどうしても手中に収める必要があった。

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製品カタログのように、ITサービスを選ぶことができる

早速、キーマンズは4月にアイティメディア本社にオフィスを移し、7月からは互いの営業人員による広告の販売も始めている。今後は料金体系の統合や、細かなアクセス分析、システム面の統合など、テックターゲットとのシナジーを追求し、2020年度に2サイト合計で売上高30億円を目指す。大槻社長が「リードジェネレーションが今後の業績を牽引する」と語るだけに、同分野の成長が中長期の業績を大きく左右することになりそうだ。

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ビジネスオンラインはテクノロジーを重視しつつも、ビジネス戦略を中心とした記事で構成されている

新規買収と同時に、4月には既存メディアの再編も実施した。2007年に開始した「ビジネスメディア誠」などを集約し、新たに「ITmedia ビジネスオンライン」を立ち上げている。テクノロジー企業を中心とした企業戦略や決算情報を提供する媒体で、毎日6~10本ほどの記事を配信する。「編集記者がITに詳しいことが強み。テクノロジーによってビジネスがこれだけ変わるという情報を示していく。3~4割が業績関連の記事になる」(小林伸也編集長)。

従来の「誠」は同社初のビジネスサイト。若手ビジネスパーソン向けにビジネスの感度を上げる情報を提供してきたが、非IT部門、実務部門のユーザーをとらえきれていなかった。また、最近は日経BP社などの経済メディアがネット展開に本腰を入れたこともあり、広告主であるITベンダーへの営業も激化していた。そこで、ビジネス記事を提供するサイトであることを明確にして再出発する。狙うユーザーはキーマンズと近く、業務上の課題の解決策を探す実務部門のユーザーだ。

アンケートでユーザー獲得をチェック

このため、編集部が重視するのは「アクションリーダー」の増減だという。企業の戦略や投資を決定する現場のリーダーのことで、3週間に1回程度アンケートを実施し、狙ったユーザーを獲得できているかチェックする。「何でもいいからPVを増やせばいいモデルではない。ユーザーの質を保たなければメディアの付加価値は落ちてしまう」(ビジネスIT統括部長の石森将文氏)。

編集部は3人と少ないが、「ITmedia ニュース」と一体運営している(合計6人)。そのITmedia ニュースは人工知能など、最先端のテクノロジーを追った記事などを取り扱う。主なユーザーは先鋭的なクリエイター層。明確にターゲティングできているため、広告主の評価は高い。「今は媒体として過去最高の実績。ソーシャルゲームに近い利益率になっている」(石森氏)。

今後は外部スタッフとも協力しつつ、企業の商品戦略の裏側を担当者にインタビューする記事、公共交通をビジネスの視点でとらえた記事など、独自のコンテンツを広げていく。ここは既存の経済メディアとの競争になるだろう。ビジネス分野の経験は少ないだけに、人材育成も同時に進める考えだ。

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